ナノ発光材料のもつ量子的な性質を深く理解することは、その材料を用いた光デバイス・光源・光技術の開拓を目指す研究分野において重要な課題である。本研究では、様々な単一ナノ発光材料に活用できる新しいモルフォロジー分析技術を開発することを目指した実験を実施した。最終年度には、空間的に孤立した単一のナノ粒子から2つの光子が連続的に放出される2光子カスケード発光を精密に分析するために、高密度励起条件化で活用できる新しい解析技術を開発した。同時計測した強度相関のデータと発光減衰曲線のデータを精密に解析することにより、高密度励起条件でもカスケード発光の量子効率の相対値を決定できることを明らかにした。開発した新しい解析技術を活用し、単一のCdSe/ZnSナノ粒子における2光子カスケード発光の寿命と量子効率の関係性を高密度励起条件において調べた。高密度励起条件下で生じやすいナノ粒子のイオン化により、ナノ粒子の内部の電荷の数が変化し、その変化が2光子カスケード発光の寿命や量子効率に大きく影響することを明らかにした。また、ELディスプレイへの活用が期待される発光材料である、無機CsPbBr3ペロブスカイト量子ドットを対象として、単一ドット発光分光実験を行った。3つの電荷からなるトリオン状態の生成が、Snドープによって抑制されていることを明らかにした。様々なモルフォロジーをもつ単一ナノ発光材料に活用できる新たな2光子カスケード発光分析技術を構築し、その有効性を明らかにすることができた。
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