研究課題/領域番号 |
16K17484
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森下 弘樹 京都大学, 化学研究所, 助教 (20701600)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ダイヤモンドNV中心 / 電気的磁気共鳴検出 |
研究実績の概要 |
ダイヤモンド中の窒素―空孔(NV)中心の電子スピンは,室温で長いコヒーレンス時間をもつため,室温で動作する,磁気・電界センサーとしての応用が期待されている.現在までの多くの研究では,このNV中心の電子スピンの状態を光学的に検出してきた.その一方,デバイス応用上必要となる電子スピン状態の電気的検出を行なった報告は数件のみである.そこで本研究では,このNV中心の電子スピンの電気的コヒーレント検出を目指す. そのために平成28年度は,(1)NV中心の連続波電気的磁気共鳴検出と(2)時間領域電気的磁気共鳴検出装置の構築の2つを行なうことを計画した.まず,NV中心の電気的磁気共鳴検出のために利用するサンプルの選定を行いながら電子スピンの電気的検出を試みた.NV中心の濃度の異なるいくつかの試料を測定し,NV中心の電子スピン共鳴の電気的検出に成功した.そして,(2)の課題である,時間領域電気的機器共鳴検出系の構築を行なった.まず,マイクロ波をパルス化し,磁気共鳴信号がどのように時間変化するかを測定した.この測定によっても連続波電気的磁気共鳴信号と同様の信号を得ることを確認した.さらに,光学検出との比較も行い,光学的磁気共鳴検出と同様の信号が電気的にも観測することができ,最初の課題をこなすことができた.さらに,時間領域電気的磁気共鳴検出系の構築を進めた.まず,(1)の課題で得られた信号の信号強度を上げるように測定系の改良を行った.そして,NV中心の電子スピンのラビ振動測定を行い,電気的にラビ振動を観測することが出来た. 以上のように平成29度予定していたラビ振動の観測まで研究を進めることができ,当初の予定よりも研究計画を進めることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに,予定していたNV中心の電子スピンの電気的コヒーレント検出を行なうことができた.平成28年度は,(1)NV中心の連続波電気的磁気共鳴検出と(2)時間領域電気的磁気共鳴検出装置の構築の2つを行なうことを計画した.この2つの計画は,サンプルを選定することで,成功した.(2)の研究において,マイクロ波をパルス化し,磁気共鳴信号の時間変化を測定した.この測定によっても連続波電気的磁気共鳴信号と同様の信号を得ることを確認した.さらに,光学検出との比較も行い,光学的磁気共鳴検出と同様の信号が電気的にも観測することができ,最初の課題をこなすことができた. さらに,構築した時間領域電気的磁気共鳴検出装置を利用して,信号強度のマイクロ波パルスの長さ(時間)依存性を測定した.その結果,信号強度の振動が観測され,この振動が電子スピンのラビ振動に対応する. 以上のように,平成29度予定していたラビ振動の観測まで研究を進めることができ,当初の予定よりも研究計画を進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に計画していたNV中心の電子スピンの電気的コヒーレント検出は,当初の予定以上に研究を進めることが出来た.しかし,海外の競合グループも同様の研究に我々に先駆けて成功してしまった.しかし,本申請で計画いていた光検出との比較などは,未だ行なわれていない.そこで,平成29年度の研究として,次の2つの研究を行うことを計画した. (1) 核スピンの電気的検出 NV中心を用いた核スピンの検出がNV中心を用いた磁気センサー研究の1つの課題になっている.これは,物質を構成する核スピンを検出することは,物理だけでなく,化学や生物までの広い分野への応用につながる量子センシングを実現することになるからである.本研究でも,電子スピンのコヒーレント検出ならびに制御が可能になったため,核スピンの電気的検出を次の目標として,研究を推進する.方法は,電子スピンを介して,核スピンを検出する電子・核2重共鳴(ENDOR)の電気的な検出を行なう. (2) 核スピンの検出効率も加味した,光学検出との比較 核スピンの電気的検出を行なった後に,光学的な検出との比較を行なうことを計画している.電子スピンを介して,核スピンの情報を読み取るENDOR手法を用いるため,原理的には,電子スピンの検出と同じと考えられる.しかし,核スピン共鳴を起こすラジオ波を照射することによって,余分な電流が発生することが考えられるため,その直接の比較を行うことが重要であると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の研究が当初の予定よりも進むことがわかり,時間領域測定を行った.そこで,平成28年度に予定していた磁場測定システムの構築を平成29年度の計画に入れたため.
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次年度使用額の使用計画 |
電磁石から発生する磁場を構成するシステムのするために必要な物品を購入するために,使用することを計画している
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