ダイヤモンド中の窒素―空孔(NV)中心は,室温でも長いコヒーレンス時間を有するため,量子センサーや量子情報処理デバイスへの応用に向けて広く研究されている.これらのデバイスの高度化や集積化のためには,現在広く用いられている光学的な手法よりも電気的な手法を用いてNV中心の電子スピンや核スピンコヒーレンスを検出する必要がある.しかし現在,電気的な検出は,アンサンブル電子スピンコヒーレンスの検出には成功している段階であり,核スピンコヒーレンスの電気的検出の報告されていない.そこで本申請では,核スピンコヒーレンスの電気的検出のために,電気的電子・核二重共鳴検出(EDENDOR)という手法を用いることにした.EDENDOR法を利用することで,室温下でNV 中心の窒素核スピンのラビ振動と核スピンコヒーレンス時間(T2) 測定を行った.その結果,T2 ~ 0.8 ms を得た. さらに本課題では,量子センサーの高感度化に向けてドレスト状態を用いたハイブリットセンサーに着目した.ドレスト状態は,NV中心と強マイクロ波モードをカップリングさせるAulter-Towns Splitting (ATS) 法を用いて生成した.生成されたドレスト状態の共鳴周波数の強マイクロ波の周波数や強度依存性を調べ,ATS法に依るドレスト状態の生成であることを示した.次に,ドレスト状態を利用した量子センサーの性能の1つの指標を評価するために,コヒーレンス時間を測定した.その結果,コヒーレンス時間がドレスト状態を生成することによって2桁長くなることが分かった.さらに,計算上量子センサーの感度が,コヒーレンス時間の長時間化によって1桁向上することが分かった.
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