本研究は、磁性体表面の漏洩磁場をベクトル分解して方向別に定量値を計測し、それらの2次元分布を磁区ドメインレベルの分解能で明らかにすることである。H30年度は、研究期間の1年延長による垂直・面内の独立磁場出力が可能な2磁区電磁石の再設計および磁気力顕微鏡装置への組み込み調整と、垂直・面内磁場の独立検出の検証実験を中心に以下の2項目を実施した。 (1)2軸電磁石の調整および磁気力顕微鏡内への組み込み 昨年度に発覚した、電磁石の面内磁場印加を担う対向磁極と探針の2次元走査を行うピエゾ間のスペースマージン不足の問題を解消し、ベクトル磁場検出が可能な磁気力顕微鏡を完成させた。磁場を発する磁極の形状の調整によって、マージン拡大(磁極間ギャップ拡大)による磁場出力の低下もさほど大きくなく、磁気力検出感度も十分であることが確認できた。 (2)カンチレバーのマルチモード励振および方向別の磁気変調の実証 磁性体試料が発する漏洩磁場の試料面垂直方向(カンチレバーの長手方向)と面内方向(カンチレバーの幅方向)を同時に検出するために、昨年度広帯域化したカンチレバーの変位検出系を用いて、カンチレバーを「たわみ」(垂直方向)と「ねじれ」(面内方向)の2つの振動モードで励振させることに成功した。また、磁性探針に垂直と面内方向に、直流及び異なる周波数の交流磁場を印加した状態で、探針の振動スペクトルを計測し、両方向に磁気変調が掛かっている事を確認し、垂直・面内方向の磁場定量値イメージングが行える状態にまで到達した。
|