既存の有機/無機ナノコンポジットの多くは、有機ポリマーの緻密なマトリクスに無機ナノ粒子・ナノシートなどを包埋させた形態をとり、制御された空隙構造をもたない。一方、無機ナノ粒子の表面で発現するさまざまな機能は、ナノ粒子が緻密なポリマーに埋没した状態では利用できないため、従来の緻密なナノコンポジットは、これらの機能の発現に必ずしも適した形態をしていない。そこで本研究では、無機ナノ粒子が「あたかも何もない空間に固定されたかのような」超高空隙率の新規ナノコンポジットを提案した。 上記のナノコンポジットを、有機ポリマーナノファイバーからなる高空隙率(~97%)マトリクスに、無機ナノ粒子を3次元的に均質に固定することで実現した。さらに、従来の緻密なナノコンポジットと異なり、開発したナノコンポジットでは、無機ナノ粒子がマトリクスの内部にありながらも表面を外気に露出しており、物理的にも光学的にもマトリクスに阻害されることなく表面化学機能を発現できることを実証した。 続いて、ナノ粒子の空間配列や空隙構造をより精密に制御する指針を得るため、メソ空隙構造のベースとなるナノファイバーの形成過程の解明に取り組んだ。その結果、従来は微細構造に影響を与えないと考えられていた乾燥過程が、ナノファイバー形成の重要な因子であることを解明し、メソ空隙構造の精密制御の可能性を示した。以上の成果は、今後の超高空隙率ナノコンポジット材料の高機能化研究の基盤となる知見を構築するものである。
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