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2016 年度 実施状況報告書

オールナノカーボン電極による透過型有機太陽電池の研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K17497
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

藤井 俊治郎  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (80586347)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード有機薄膜太陽電池 / 透明電極 / 酸化グラフェン / 有機無機ハイブリッド / ペロブスカイト太陽電池
研究実績の概要

近年、塗布形成可能かつ高い光電変換効率が期待される有機無機ハイブリッド型ペロブスカイト太陽電池が注目を集めている。そこで初年度は、ナノカーボン材料を部材として用いた有機鉛ペロブスカイト太陽電池の作製に取り組んだ。一般的にホール輸送層には導電性高分子であるPEDOT:PSSが用いられている。しかしながら、PEDOT:PSSは強酸性・吸湿性を持つため、素子の劣化を早めるなどの問題が懸念されている。本研究では、酸化グラフェンを採用し、PEDOT:PSS代替の材料として適用できるかを検証した。PEDOT:PSS、酸化グラフェンを用いて作製したペロブスカイト太陽電池の発電効率は最大でそれぞれ5.1%、4.0%を示した。酸化グラフェンがペロブスカイト太陽電池のホール輸送層として、適用可能であることを明らかにした。他方、透過型の有機薄膜太陽電池(OPV)は、ビニールハウス、建物の窓やブラインドなどサンシェード機能を持つ部材などへの応用が期待されている。低ギャップ半導体ポリマー(PTB7)とフラーレン誘導体(PC71BM)活性層に用いたバルクヘテロ構造の有機薄膜太陽電池は、可視光領域で広い吸収波長を持つ。そこで本年度は、この性質を利用した半透明太陽電池の新規色制御法を提案・実証した。上部電極の金属材料を変えることにより、同一の活性層材料で色制御を試みた。酸化モリブデン/金属極薄膜(Au、Ag、Cu/Al)を上部電極として用い、ITO/ガラス基板上に作製した透過型OPVは、グリーン、ブルー、グレーと色が変わることが分かった。両面からの発電を確認でき、ITO側から入射した場合は金属材料によらずほぼ同等の性能を示し、発電効率は約3%であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ナノカーボン材料を部材とした有機鉛ペロブスカイト太陽電池において、酸化グラフェンがホール輸送層として機能することを現在までに確認することができた。この結果は、オールカーボンアノード太陽電池の作製に向けた第一歩である。一方、透過型の有機太陽薄膜電池においては、同一の活性層を用い、上部電極の金属の種類を変えるだけで色が制御できるという新たな知見が得られた。以上より、研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

昨年度確立した酸化グラフェン(GO)を用いた有機鉛ペロブスカイト太陽電池の作製技術を基盤として、次年度はデバイス構造の検討および作製条件(GOの膜厚・導電率など)の最適化を行い、発電効率のさらなる向上を狙う。陽極上のホール輸送層には、酸化グラフェンが適用できることが分かったので、来年度は陽極をITO電極から、同じナノカーボン材料であるグラフェン透明導電膜に置き換えることにより、オールカーボンアノード太陽電池の作製を目指す。並行して、室内光発電を目指した室内光(LED)下における太陽電池の特性評価や、有機無機ハイブリッド構造を用いた新しい動作原理のエネルギー変換デバイスの作製も試みる。

次年度使用額が生じた理由

今年度は、当初予定していた物品費のうち、消耗品費(主に太陽電池用材料)を少なく抑えることができたため、次年度に繰り越す予算が約200千円生じた。

次年度使用額の使用計画

前年度に引き続き、有機無機ハイブリッド太陽電池および透過型有機薄膜太陽電池を作製するための消耗品費、成果発表のための学会旅費などに使用する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Inverted bulk-heterojunction solar cells on a PEDOT:PSS-Coated PEN substrate with PFN as a cathode buffer layer2016

    • 著者名/発表者名
      Kosei HASHIBA, Shunjiro FUJII, Hiromichi KATAURA, Yasushiro NISHIOKA
    • 雑誌名

      IEICE Trans. Electron.

      巻: E99-C ページ: 555-558

    • DOI

      10.1587/transele.E99.C.555

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Performance Improvement of PTB7:PC71BM Bulk Heterojunction Solar Cells by Adding Multiple Surfactants2016

    • 著者名/発表者名
      Masaya OHZEKI, Shunjiro FUJII, Hiromichi KATAURA, Yasushiro NISHIOKA
    • 雑誌名

      IEICE Trans. Electron.

      巻: E99-C ページ: 551-554

    • DOI

      10.1587/transele.E99.C.551

    • 査読あり
  • [学会発表] ナノカーボンおよび導電性有機材料を用いたフレキシブル透明導電膜の作製と応用2017

    • 著者名/発表者名
      藤井 俊治郎
    • 学会等名
      表面技術協会135回講演大会
    • 発表場所
      東洋大学川越キャンパス
    • 年月日
      2017-03-09
    • 招待講演
  • [学会発表] Semitransparent and Color-tunable Organic Solar Cells Using Low-bandgap Polymer and Phenyl-C71-butyric-acid Methyl Ester2016

    • 著者名/発表者名
      Shunjiro FUJII, Hiromichi KATAURA
    • 学会等名
      EMN Organic-Electronics and Photonics Meeting
    • 発表場所
      NH Collection Aranzazu, Spain
    • 年月日
      2016-09-13
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Color tuning of semitransparent organic solar cells using oxide/metal/oxide transparent anode2016

    • 著者名/発表者名
      藤井 俊治郎、片浦 弘道
    • 学会等名
      第51回フラーレン・ナノチューブ・グラフェン総合シンポジウム
    • 発表場所
      北海道立道民活動センター かでる2・7、札幌市
    • 年月日
      2016-09-09

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公開日: 2018-01-16  

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