研究実績の概要 |
本研究課題では、インフルエンザウイルスのヒトへの結合性を司るタンパク質と特異性を有するシアロ糖鎖を利用した半導体バイオセンサデバイスを作製し、パンデミックウイルスの結合性変異を見分ける手法の可能性を探索する。平成28年度は、ヒト型受容体であるα2,6結合型シアロ糖鎖および鳥型受容体であるα2,3結合型シアロ糖鎖を固定化したセンサ界面が、ヒトインフルエンザウイルス(H1N1)及び鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対する捕捉能を有するか評価した。まず、α2,6結合型シアロ糖鎖であるα2,6シアリルラクトースを固定化した界面およびα2,3結合型シアロ糖鎖であるα2,3シアリルラクトースを固定化した界面に対する、H1N1ウイルス粒子及びH5N1ウイルス粒子の吸着を原子間力顕微鏡を用いて観察したところ、α2,6結合型シアロ糖鎖固定化界面にはH1N1ウイルス粒子、α2,3結合型シアロ糖鎖固定化界面にはH5N1ウイルス粒子と考えられる100 nm程度の粒子の特異的吸着が確認された。また、シアリルルイスXラクトースの固定化条件(反応溶液濃度や反応時間)を探索し、鳥インフルエンザウイルスを捕捉可能な糖鎖固定化界面の作製を試みた。また、糖鎖を固定化した電界効果型トランジスタ(FET)バイオセンサを用いたウイルス検出の可能性を検討した。更に、今後デバイスの実用的に利用する際、鼻汁等粘液中に存在するウイルス検出が求められるが、粘液中の多糖類のムチンを多く含み粘度が高いため、センサ界面へのウイルス吸着が起こりにくくなると考えられた。そこで鼻汁の粘性を低下させるプロセスとして、ムチン内のジスルフィド結合を開裂する処理の有効性を検討した。
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