研究課題/領域番号 |
16K17500
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 慎哉 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (30509691)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 圧電MEMS / 超音波トランスデューサ / レンジファインダー / pMUT |
研究実績の概要 |
①クラックフリーの超高性能理想配向PZT系単結晶薄膜のSi基板上への形成 スパッタ急冷法によって形成した正方晶組成c軸配向PZT系単結晶薄膜の性能の高さは,申請者のこれまでの研究によって実証済であった。しかし,c軸配向を強制的に促進させるがゆえに,残留応力によってクラックがしばしば生じるといった問題が生じていた。そこで,成膜温度やスパッタ急冷回数について最適化を行った。その結果,クラックの生じない単結晶薄膜を形成できる条件を見出した。その特性は,e31,f=14.5 C/m^2, 比誘電率=250~300であり,pMUTレンジファンダーに適した特性を持つことが実証された。 ②pMUTの信号雑音(SN)比を最大化するための理論の構築 pMUTのSN比を最大化するためには,大きな圧電特性と小さな誘電率を両立する圧電薄膜を用いることが望ましいということは定性的に理解されてきた。しかし実際のデバイスでは,機械的熱雑音や電子回路由来の雑音が存在する。これによって,圧電材料の特性が実際にどのように,そしてどれくらいpMUTのSN比に影響を与えるかについては不明瞭であった。そこで,電流や電圧,電荷検出方式のセンサ―回路における圧電材料の特性とSN比の関係について理論式を導出した。その結果,いずれの回路においても,申請者の開発した上記PZT系単結晶薄膜は,pMUT用として最適な材料の一つであることが導き出された。 ③ユニモルフ駆動超音波距離センサ―の試作 得られた高性能圧電単結晶薄膜を用いた超音波距離センサーの微細加工プロセスの開発を行った。その結果,ユニモルフ駆動型デバイスの試作に成功した。並行して,このデバイスの性能を評価するための電荷検出型回路の試作を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PZT系単結晶薄膜の成膜時にクラックがしばしば発生するという問題は,当初予期していなかった問題であったが,成膜条件を見直すことで早期に解決できた。これにより,2016年度内にデバイスの加工プロセスを確立し,一次試作を完了することができた。 また,申請者の開発した圧電単結晶薄膜は,pMUT用として最適な材料の一つであることを理論的に導出できたことは,今後の実験的実証のための重要な知見である。 さらに,検出回路に関する知見やノウハウの蓄積は,今後センサーシステムを構築する上で必須であるが,これも2016年度内に達成できた。 以上より,本研究課題は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,試作したデバイス単体についての性能評価を行い,申請者のPZT系単結晶薄膜を搭載したpMUTは,従来のものと比較して圧倒的に高性能であることを実証する。 次に,用途に合わせて構造や駆動周波数などを最適化したデバイスを作製し,ロボット用分散型センサシステムや画像化システムなどを研究開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の汎用的な研究資金によって,消耗品などの物品費や,共通機器使用料などを支払うことができたので,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は,初年度の成果を基にデバイスの試作回数を増加し,さらにシステム開発も行う。そのために,スパッタターゲットや消耗品,電子回路などの物品費や,共通機器使用料,実装基盤作製依頼,国際会議での成果発表のための旅費,論文投稿費など,初年度以上に費用が必要と予想される。ゆえに,助成金はこれらに使う予定である。
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