研究実績の概要 |
1.PZT用金属エピタキシャルバッファ層の探索 これまではSi基板上に酸化物バッファ層を用いていたが,理想的には電極抵抗をより低下させることが望まれていた。そこで,(100)SrRuO3/(100)Pt/(100)Ir/(100)YSZという,金属層も含むバッファ層構造の開発を行った。Ptの(111)方位への自律配向性が強く,酸化物バッファ層よりもプロセスウィンドウが狭かったが,成膜温度や圧力を最適化することでこれを達成した。次に,その上にPZT膜をエピタキシャル成長させ,その性能を評価した。その結果,酸化物バッファ層上と遜色のない高性能指数のPZT系単結晶薄膜の形成に成功した。
2.pMUTレンジファインダの試作 理想配向PZT系単結晶薄膜を用いた超小型ユニモルフ型pMUTレンジファインダを試作し,測距実験を行った。その結果,閾値を12dBとしたとき,1Vp-pという小さな駆動電圧でも,最大測距距離2m以上を達成した。このような低電圧駆動での長距離測距は,一般的な圧電膜,例えば多結晶PZT薄膜やAlN系薄膜では達成は難しい。低電圧駆動が可能であるということは,デバイスを駆動するための昇圧回路や高耐圧回路を必要とせず,一般的な集積回路の出力電圧で直接駆動できることを意味する。また,AlN系薄膜よりも20倍程度誘電率が大きいので寄生容量に対するロバスト性も高く,実装形態の自由度が高いことも示された。これらの結果から,汎用ICとデバイスからなる安価なロボット用近接覚センサモデュールを実現できる可能性が示唆された。
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