研究実績の概要 |
本研究では,独自に開発したモノレイヤー細胞シート作製技術(メッシュ培養技術)及びマイクロ流体技術を駆使し,血管細胞と神経細胞の3次元共培養を可能にするマイクロデバイスを開発することにより,血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の基礎機能ユニットを生体外で再現することを目指した.このようなモデルは薬物動態に応用が期待されている. 平成28年度では,血管内皮細胞としてHUVECsを用いた場合,VE-Cadherinを発現する接着結合は確認できたものの,密着結合は確認できなった.そこで,平成29年度では,メッシュ培養したHUVECsをマトリゲル上に重ねるという新しい血管細胞シート作製法を導入した.その結果,HUVECシートの作製がより安定にできるようになり,また,Occludinの免疫染色によりタイトジャンクションの形成も確認できた.さらに,血管・脳細胞の3次元共培養システムの確立において,脳幹細胞をマトリゲル層内で培養し,さらに分化誘導試薬を導入することで,アストロサイト,神経細胞,およびオリゴデンドロサイトへの分化誘導を試みた.分化誘導の結果,神経細胞への分化が比較的高い確率で得られた一方で,アストロサイトへの分化効率が極めて低かった.そこで,神経細胞のマトリゲル層の上部に血管細胞を重層化した共培養システムを新たに作って再度実験を行った結果,脳細胞の増殖と神経細胞への分化は顕著に改善したが,アストロサイト分化には特に影響はなかった.これを受け,現在,BMP4等のアストロサイト分化誘導に用いられるサイトカインを用いて改善を図っている. 本研究を通じて,BBBの3次元モデルの樹立を目指し,血管内皮細胞シートの作製手法の確立,および脳細胞の3次元培養は達成できたといえる.しかし,最終目的の相互作用の検討にはまだ至っておらず,今後とも取り組んでいく所存である.
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