平成29年度は、前年度に検討した2つの要素技術を融合したMEMS型ガスセルの試作、およびガスセル感度とその安定度を計測・評価して作製法にフィードバックしながら、目標達成と提案手法の優位性を実証した。またシリコン製AMSTにおける三次元微細構造に依存したアルカリ金属アジ化物の分解反応について考察した。 3)MEMS型ガスセル作製法の確立:シリコン製AMSTを応用したセシウム生成法と低温・高真空気密封止を融合したMEMS型ガスセルのウェハレベル作製法を確立した。具体的には以下の作製プロセスを確立した。①アルカリ金属アジ化物を担持するためのシリコンの三次元微細構造を準備、②光学チャンバとアルカリ金属ガスを生成するためのチャンバを有するキャビティ構造、およびそれらを連結するマイクロ流路をD-RIEで形成して陽極接合、③アルカリ金属アジ化物を水溶液にして、シリコンの三次元微細構造に析出、④接合装置内にサンプルをセットして、ハイブリッド接合技術でガスセルを封止、⑤アルカリ金属アジ化物を約300℃で熱分解してセシウムとバッファガスである窒素を同時に生成し、MEMS型セシウムガスセルとして完成。 4)MEMS型ガスセルの性能評価:ウェハレベルで作製したMEMS型ガスセルの光学特性や周波数特性を計測して性能を評価した。具体的には多孔質アルミナ製AMSTとシリコン製AMSTのそれぞれで作製したMEMS型ガスセルの性能の比較・評価した結果、シリコン製AMSTで作製したガスセル性能が多孔質アルミナ製AMSTで作製したものより性能として優れていることを示した。以上の結果から本研究課題における目標を達成するとともに、チップスケール原子デバイスのガスセル作製技術における新展開への目途を立てた。
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