研究課題/領域番号 |
16K17503
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福山 真央 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40754429)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自然乳化 / マイクロ水滴 |
研究実績の概要 |
本年度は、マイクロ水滴内の溶質のナノ水滴への分離効率向上を目指し、マイクロ水滴-ナノ水滴間の水分子および溶質分子の分配特性を明らかにした。マイクロ流体デバイス中に100-200 μmサイズの有機相中水滴を等間隔に並べたマイクロ水滴アレイを作成し、有機相中逆ミセルのマイクロ水滴表面への供給量と速度を制御しつつマイクロ水滴-ナノ水滴間の物質輸送を観察できるシステムを構築した。このシステムを用いてマイクロ水滴の縮小とマイクロ水滴内の蛍光強度の時間変化を計測することで、水と蛍光色素の輸送量からマイクロ水滴-ナノ水滴間の見かけの分配係数を算出した。その結果、同種の溶質がマイクロ水滴内に含まれる場合であっても、界面活性剤の供給速度やイオン性界面活性剤の添加によりマイクロ水滴-ナノ水滴間の水と溶質の見かけの分配係数が変化しうることが示唆された。この結果より、界面活性剤の供給条件や種類を変更することで、マイクロ水滴内の溶質の分離/濃縮効率を向上できることが明らかとなった。また、これまではマイクロ水滴から分離できなかった生体高分子についても、界面活性剤の種類や供給条件を最適化すれば分離が可能になると期待する。今後、有機相中へのタンパク質抽出に有効と知られているリン酸系界面活性剤等を利用し、酵素活性測定など生化学分析への応用を目指す。同時に、分配係数の変化に影響していると考えられるマイクロ水滴-ナノ水滴への水の輸送速度に注目し、その律速過程の解明など基礎的な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の液液抽出法では、分配係数の調節には抽出剤の添加やpHの調節など、系の化学組成を変化させる必要があった。一方、本手法を利用すれば、有機相の流速を調節するだけで、見かけの分配係数を調節しマイクロ水滴内包物の分離/濃縮の挙動を切り替えることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を踏まえ、生化学分析への応用を試みる。具体的には、酵素反応等の生化学反応の解析への利用を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマイクロ流体デバイスのデザイン検討が難航すると考え、デバイス作製のための材料費を多く計上していたが、実際は本年度の早い段階でデバイスのデザインの最適化が完了し、材料費の支出が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
デバイスデザインの最適化が速やかに終わった一方で、生体高分子を試料として使用し再現性のよい実験操作をするためには、デバイスを一度きりの使用で廃棄する必要あることがわかった。そのため、来年度以降の生化学分析を試みる段階では、計画段階での想定よりも多くの材料費が必要になるため、そこに充当する予定である。
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