今年度は、窒化ガリウム(GaN)中の単一プラセオジム(Pr)の単一光子発生を観測するため、Prイオン注入したGaNの共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡(CLSM)による発光観測を行った。現在保有するCLSMでは検出感度やS/N比の観点から、単一Prの観測は困難であると判断し、最小1μm四方の微小領域へのPr注入を行い、観測可能な最小アンサンブル数が100~1000個程度であることを明らかにした。また、励起光波長を532nmではなく405nmに変更すると、発光強度が10倍近く増大することを明らかにした。波長可変レーザーを用いて最適な直接励起波長を見出すことにより、単一Pr観測が可能であるという見通しを得た。また、PrドープGaNの光検出磁気共鳴(ODMR)に挑戦し、300MHz付近に発光強度のコントラストが発生し、それが外部磁場によって変化することを見出した。このコントラストが3価Prにおける4f殻電子のどの準位の共鳴に起因するかは、現在検討中である。 一方、注入したPrの活性化率を更に向上させるため、Si3N4被覆と高温熱処理を組み合わせた手法により、昨年度実績よりも約3倍の活性化率向上に成功した。加えて、高温イオン注入についても更に詳しく検討を行い、今回の条件においては、高温でイオン注入するほど活性化率が低下するという結果を得たことから、高温イオン注入よりも、室温でのイオン注入後に1300℃以上の高温で熱処理する方が効果的であると結論づけた。
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