研究課題/領域番号 |
16K17509
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
松本 利映 国立研究開発法人産業技術総合研究所, スピントロニクス研究センター, 研究員 (10635303)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピントルク / コーン磁化 / 垂直磁化 / 一軸磁気異方性 |
研究実績の概要 |
コーン磁化状態とは一次と二次の磁気異方性の競合により実現する傾いた磁化状態である。コーン磁化薄膜を磁化自由層として用いることで高速・低消費電力なMRAM素子を実現可能であることを研究実施者は既に指摘していた。平成28年度は、ゼロバイアス電流で垂直磁化状態の薄膜を磁化自由層として用いた場合であっても、二次の磁気異方性を利用することで高速・低消費電力なMRAM素子を実現可能であることを新たに指摘した。動作速度に関しては、書込み電流パルスの立ち上がりの過程で垂直磁化状態からコーン磁化状態を経由させることで高速スイッチングが可能であることを示した。消費電力に関しては、二次の磁気異方性はスイッチングに必要な電流を上昇させずに熱擾乱耐性を上昇させる効果があることを確認できた。本研究成果について国内特許出願を行った。国内(磁気学会)と国外(2016 MMM)での学会で口頭発表も行った。
また、コーン磁化薄膜を発振器の磁化自由層として応用することも検討した。垂直磁化ポラライザ層の発振器においては、コーン磁化自由層の場合は面内磁化自由層の場合より発振に必要な電流(閾電流)が大きくなるなどのデメリットが判明した。この結果について平成28年度中に国際学会(MML 2016)において発表を行った。この研究の過程で、応用上重要な面内磁化自由層の場合について、閾電流の解析式を得ることができた。本成果についてAIP advances誌に論文発表を行った。また、平成29年度中に国際学会(INTERMAG 2017)において口頭発表を行うことが確定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画書の内容よりインパクトの大きいアイデアを出し、国内特許出願に至ったため。計画書において、平成28、29年度の目標として高速・低消費電力の観点からSRAM 代替要件を満たす素子パラメタを決定することを目標としていたが、出願書類の実施例としてその素子パラメタを記載しており、当初の目標もクリアしている。
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今後の研究の推進方策 |
二次の磁気異方性を利用した垂直磁化のMRAM素子の研究をまとめ上げる。平成28年度は書込み効率向上に注力してきたが、平成29年度は二次の磁気異方性が読出し性能に与える影響についても調査する。読出し動作でリード・ディスターバンスと呼ばれる読出し中の誤書き込みが起こり得る。リード・ディスターバンスが起こる確率は、一次だけでなく二次の磁気異方性にも依存する。二次の磁気異方性が書込み性能と読出し性能に与える効果を論文としてまとめあげる。特許の外国出願も行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
合い見積もりにより当初の予定より安く物品を調達できたため、124円の端数が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費および旅費として有効活用したい。
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