研究課題
本年度は赤外及びラマン分光法を用いて高密度SiドープGaN薄膜において空間的な電子濃度分布を評価し、ドーピングの高密度限界を求めた。ホール効果測定はキャリア濃度や移動度など物性評価によく使われるが、電極形成によるキャリアトラップやキャリア密度の平均値測定になること、膜厚評価不可等の問題点がある。赤外分光と顕微ラマン分光による空間分解評価は半導体材料製造過程の制御や低抵抗、高電子移動度、高電導性材料製作の基礎情報提供手段として期待できる。ホール効果測定から見積もられた電子濃度がne(H)=0.7~3.0E20cm-3程度のSiドープGaN薄膜について赤外反射測定を行った。転送行列法を用いて電子濃度が深さ方向に分布する層状のモデルを用い、LOフォノンプラズモン結合(LOPC)モードを配慮して解析を行った結果、深さ方向の電子濃度分布にドーピング密度による変化が観測された。低電子濃度試料ではほぼ均一または表面に近づくに連れて電子密度が高くなり、高電子濃度試料では表面に近づくと電子濃度が低くなる結果が得られた。ラマン散乱のE2Hピークエネルギーのサンプル深さ方向の変化を調べた結果、ne (H) = 3E20 cm-3の試料が最も大きく変化している。ラマン散乱においては主に振動する原子がV族III族で異なるE2L、E2Hのモードに依存した変化が見られたことから、高電子濃度試料ではドーピングによる結晶性劣化やSiのN位置の占有によるアクセプタ準位の形成や格子間位置へのドーピングによる表面方向への電子濃度低減が考えられる.本研究はエネルギー損失の根源である熱発生に着目し、格子振動波(フォノン)を排出でなく、利用することを狙う。このために、材料中の転位や不純物の空間濃度解析はそれらの制御、フォノンバンド構造制御等による空間的フォノン輸送制御に役に立つ。
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Nano Energy
巻: 57 ページ: 300,306
https://doi.org/10.1016/j.nanoen.2018.12.036