研究実績の概要 |
本研究では、次世代パワー半導体材料Ga2O3の結晶欠陥を短時間で簡易且つ正確に検出・分類できる化学的エッチング手法の確立を目標とした。 H28年は、化学実験と表面観察を中心として研究を進めた。 (-201)面および(010)面ウエハを用い、腐食性を有する溶融アルカリのエッチング効果を検討した。具体的には、200-650oCの温度領域内、水酸化物(KOH、NaOH)をベースとし、異方性エッチングを促進する効果を有するNa2O2を添加して、エッチピットの形成条件を徹底的に検討した。各条件でのエッチレートの温度依存性を調べ、活性化エネルギーを計算し、化学反応のメカニズムを検討した。また、エッチピットの形状評価は、レーザー顕微鏡と走査型電子顕微鏡で行い、転位種類を反映したエッチピットを7種類に分類した。ウエハ全面にわたり、転位密度、種類、分布情報を統計処理で解析した。 H29年は、エッチピット転位分類法の精度を検証するために、放射光X線トポグラフィを実施した。g=-623, 006, -603等、10数条件の回折で同一場所の転位を観察し、g・b法則で転位のバーガースベクトルを正確に決定した。個別の転位のバーガースベクトルを精密に判定するために、集束イオンビーム加工を用い、狙ったエッチピットの直下に存在する転位を抽出し、透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果、転位線方向が結晶のb軸に沿い、転位バーガースベクトルが[010]である螺旋転位が主な転位種であることがわかった。エッチピット法を大口径Ga2O3ウエハに適用し、エッチングの均一性、安定性を向上させ、手法の高度化を図った。 以上の結果を基に、国際会議招待講演を含め、2件の学会発表を行い、現在論文投稿を準備している。今後は、本手法を更に高度化し、結晶成長条件最適化やGa2O3パワーデバイス不良解析への応用を展開したい。
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