本年度は先端径を縮小した液体金属探針の開発、および液体金属探針を用いた有機半導体薄膜の電気伝導特性測定を行った。 まず、実体顕微鏡下で液体金属を金属探針に接合することで、昨年度まで200μm~300μmであった先端径を100μm未満に縮小した液体金属探針を作製することに成功した。一方で、先端径100μm未満の液体金属探針では有機半導体薄膜とは十分な電気的接触が取れないことが判明した。これは液体金属GaIn表面が酸化膜で覆われているためであり、酸化膜除去のため塩酸処理を行ったが、完全な解決には至らなかった。そこで、以降の測定は先端径100μm以上の探針で行った。 次に、昨年度に引き続き有機半導体薄膜の電気伝導特性の測定、特に本年度は有機半導体単結晶や自己組織化単分子膜の測定を行った。これらの測定を通じて、液体金属GaIn探針が単結晶試料や自己組織化単分子膜に対しても有効であることを示した。ここで、有機半導体の膜厚が1μm程度に厚くなると液体金属GaIn探針での測定が困難となる一方で、金探針を用いた測定が可能であった。すなわち、有機半導体の膜厚に応じて液体金属GaIn探針と金探針を組み合わせることで、膜厚1.5nm~1μm程度の幅広い試料に対して測定が可能であることを実証した。 本研究は、先端径100μm程度の液体金属探針を開発し、膜厚1.5nmの単分子層ペンタセントランジスタの電気伝導測定が可能であることを示した。また、有機半導体薄膜、有機半導体単結晶、自己組織化単分子膜などの試料において、4探針法を用いた電気伝導特性、特に移動度やFET閾値電圧の面内異方性測定が可能であることを示した。
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