研究課題/領域番号 |
16K17520
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
土屋 敬志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (70756387)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 不揮発性メモリ / 酸化物薄膜 / イオニクス |
研究実績の概要 |
近年、世界的に開発の緊急性が増している次世代型不揮発メモリの中でも特に応用価値の高い抵 抗変化型メモリ(ReRAM)であるが、現状では実用化された例は少なく、本格的な実用化には至っていない。最も大きな課題は、(1)書き換えの繰り返しにより生じるデバイスの劣化、及び(2)不十分な特性である。本研究では電界放出型トランジスタ(FET)構造を採用することでJoule 熱による劣化を受けず(高繰り返し耐性・高信頼性)、さらにイオン伝導層と電子伝導層を分担化しそれぞれを高性能化することによって飛躍的な特性向上(高速動作、高抵抗変化)を実現することを目指している。 本年度はデバイス作製に使用するイオン伝導層、及び電子伝導層として有望な系の探索、各層の成膜条件の最適化、及び電気特性の評価を行った。イオン伝導層としてはリチウムイオン伝導性の酸化物薄膜、及びプロトン伝導性の酸化物薄膜に着目して検討を行った。いずれの系においてもデバイスへの応用が可能な10-7S/cm程度以上の伝導度を有する酸化物薄膜の成膜が出来た。 また、電子伝導層については実際のスイッチ動作においてより低い電子伝導抵抗を実現すべく、高い電子移動度を期待出来る高結晶性の薄膜を狙って検討を行った。この電子伝導層はスイッチ機構に関連して高い電子伝導性のみならず、高いイオン伝導性も併せ持つ必要がある。こうした系としてタングステン酸化物に注目して薄膜の成膜を行い、高結晶性薄膜の成膜が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、電子伝導性酸化物薄膜、イオン伝導性薄膜、電極等の種々の薄膜の成膜条件の検討と電気特性の評価(1)について本年度一杯、及び次年度半ばまでと予定しており、そのペースを鑑みると概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は予定通り、(1)に加えて(2)全固体イオン移動型トランジスタを用いた機能性薄膜の電気特性評価、及び(3)電子分光的手法、及び高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)を用いた動作原理の検証を行っていく。デバイス作製では、薄膜積層型のトランジスタ構造を採用し、本年度成膜に成功したイオン伝導層、及び電子伝導層を用いた全固体イオン移動型トランジスタの作製を行う。具体的な作製方法としては、リソグラフィによる微細加工手法を用いて、数100nm程度のギャップを挟んで対向するソース・ドレイン電極をタングステン酸化物薄膜上に作製する。その上からイオン伝導性薄膜を成膜してソース・ドレイン電極近傍を被覆し、さらにイオン供給能を有する電極層を成膜することによりトランジスタとする。このデバイスの電気特性を半導体パラメタアナライザを用いて評価するとともに、同様の構造により電気抵抗が変化した状態を電子分光法やHR-TEM等のその場観察手法を用いて解析する。
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