今年度はまず、回折限界を超える量子光学イメージングを古典光学的に実現する応用実験を目指した。この実験のための事前理論計算として、開口で挟まれたサンプルの線形イメージングにおいて分解能向上が実現できるかどうかを検討した。しかしその結果、古典光を用いても量子光を用いても分解能向上が見込まれないということが判明した。そのため量子光学系でも古典光学系でも実験を断念した。 想定していた研究が実現できないことが判明したため、同じく「時間反転光学系を用いて量子計測を古典的に再現する」というコンセプトの研究として、標準量子限界を超える感度の位相計測が古典光学的に実現できるかどうかを検討した。量子もつれ光子を用いることで位相感度の古典限界である標準量子限界を超えることが知られているが、使用する総光子数の条件を緩めることで、「典型的に認識されている古典限界」を超えることが時間反転系では古典光学的にも可能ではないかという点に関して検討を行った。しかし計算が煩雑であったため、期間内に実現可能性を理論的に判定することはできなかった。したがって実験も行っていない。 さらに、分散性媒質の分散の高感度測定の古典光学的実現というテーマも検討した。これは量子もつれ光子対を用いると実現できることが実験的に示されており、我々が理論的に検討したところ、時間反転光学系を用いて古典光学的に実現できることが判明した。こちらについては実験準備を行っているところで現在に至っている。
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