研究実績の概要 |
本研究では非線形波長変換を用いない、Tm添加レーザー結晶による高効率な2μm帯超短パルス光の直接発生を目指し、従来と異なる波長~1600 nmの高出力ファイバー光源を利用したin-band励起によるTm添加希土類三二酸化物(Re2O3,Re=Sc,Lu,Y)固体レーザーシステムの開発を行った。 波長2μm帯超短パルス光源は2μm帯光としての直接応用のみならず、中赤外(3-20μm)や軟X線・水の窓領域(<4.4nm)の高輝度コヒーレント光発生のためにも重要であるが、従来の0.8μmや1μm光を基本波とした非線形波長変換では、変換効率、繰り返し周波数、平均出力などの制限が大きく、より高効率・高出力な実用性に優れた光源が強く求められている。 まず励起光源として波長1600 nm以上の狭線幅Erファイバーレーザーとして世界最大出力となる、出力8Wの波長1610nm全ファイバー型、直線偏光、Er:Ybファイバー増幅システムを開発した。開発においては増幅自然放出光(ASE)と誘導ブリルアン散乱を抑制するために、ガラス材・コア径などの異なる3種の利得ファイバーとASE除去フィルタを利用した。開発した励起光源を用いTm添加固体レーザーでは世界で初めての報告となるカーレンズモード同期レーザーを実現した。最短パルス幅115 fs、最大出力1W を達成した。これはこれまでの研究報告と比較すると、2μm帯超短パルス光源において世界で3番目に短いパルス幅かつ1桁以上大きな出力である。 上記のように、Tm添加固体レーザーの新しい励起システムを考案し、カーレンズモード同期発振を実現し、従来の2μm帯Tm超短パルス固体光源に比べ2倍程度の短パルス化と一桁程度の高出力化成功した。研究成果は国際会議においても非常に高い評価を得ることができた。
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