最終年度は金属ナノ構造体からのテラヘルツ波発生のさらなる効率化を目指して、励起するフェムト秒レーザーの波長や試料の温度に対する依存性を調べた。励起レーザーとして、チタンサファイア再生増幅器から出る中心波長800ナノメートルのパルスと、その二倍波である中心波長400ナノメートルのパルスを用いて結果を比較した。二倍波は厚さ0.5ミリメートルのBBO結晶を用いて発生させ、その後ハーモニックセパレーターを用いて残留する基本波をカットしてから試料に照射した。試料の温度を変えるときは合成石英窓のクライオスタット内に試料を設置し、液体窒素とヒーターを用いて温度を制御した。励起レーザー光は45度入射で試料に照射し、反射方向に放射されたテラヘルツ波の波形を電気光学サンプリングによって測定した。金でできたナノ構造体では中心波長800ナノメートルのパルスで励起した方が同パワーの400ナノメートル光を用いたときより発生するテラヘルツ波が強く、また励起光強度に対する非線形性が大きいことが確認された。また、試料の温度を下げると室温より強いテラヘルツ波が発生する現象も観測された。当初は800ナノメートル光と400ナノメートル光を同時に照射する測定を行う予定だったがレーザーの安定性などに問題がありまだ成功していない。振動を抑える措置などを行っており環境が整い次第再度測定に取り組みたいと考えている。前年度までに行われた研究の成果は本年度に学会発表されており、本年度に行った研究の成果についても国際学会および学術論文での発表へ向けて現在原稿を準備中である。
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