研究課題/領域番号 |
16K17531
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉岡 宏晃 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20706882)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 微小共振器 / 色素レーザー / インクジェット |
研究実績の概要 |
H28年度は、1.材料の光吸収損失の改善における「ホスト材料の改善」、2.表面粗さの改善における「エッチングの機械化」、3.WGMの安定性向上における「マルチパルス制御による円盤サイズ縮小化」の計画のもと研究を遂行した。 1.においては、これまで円盤型微小共振器の主要なホスト材料としていた球状高分子は、有機材料ゆえの熱耐久性に課題があり、連続レーザー発振の阻害要因となっていた。そこで新たなホスト材料を共同研究により開発した。この材料は、シリカ系のナノ粒子をベースとしており、熱に対する耐性が極めて高く、凝集状態でナノポーラス構造を有する。この有望な材料に着目しただけではなく、これを有機溶媒に分散させた溶液をインクジェット技術で印刷できるよう最適化を行い、室温・大気圧下で円盤型微小共振器を得ることに成功し、レーザー色素をインクに事前添加した共振器によるWGMレーザー発振にも成功した。また、ナノポーラス構造下でのレーザー色素の挙動に関する評価も行った。さらに、円盤構造体の熱耐久性は簡易評価にて本研究の最終目標値を十分に達成した。 2.においては、エッチング機械化のためのシステムの構築を行った。有機溶媒での溶解の心配が無い新しいシリカ系の円盤型微小共振器の達成により、エッチングの機械化は優先度を下げて実施した。 3.においては、2.のシステムの構築と並行して、マルチパルス対応のインクジェットヘッドを導入およびシステムの構築を行った。システム完成まで、基板表面と吐出インクとの濡れの評価を行い、円盤サイズの縮小化に関して基板選定などの知見を得た。また、計算量の多い円盤構造中の光伝搬を高速に計算できるハード、ソフトの構築を行い計算の準備が整った。加えて、形状の実験評価を先行して行い、円盤のエッジ角度が大きいほどレーザー発振しきい値が低下することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度の当初の実施計画は、1.材料の光吸収損失の改善においる「ホスト材料の改善」、2.表面粗さの改善における「エッチングの機械化」、3.WGMの安定性向上における「マルチパルス制御による円盤サイズ縮小化」である。 1.においては、共同研究により新しいホスト材料を開発した。この新しいホスト材料は、シリカ系のナノ粒子をベースとしており、熱に対する耐性が極めて高い。そして、これを有機溶媒に分散させた溶液をインクジェット技術で印刷できるよう最適化を行い、室温・大気圧下で円盤型微小共振器を得ることに成功し、有機色素をインクに事前添加した共振器によるWGMレーザー発振にも成功した。また、熱耐久性は簡易評価にて最終目標値を十分に達成した。 2.においては、エッチング機械化のためのシステムの構築を行った。新しいシリカ系の円盤型共振器による熱耐久性向上に大きな進展があったため、その評価にエフォートを振り分けたことでエッチングシステム構築に関してはわずかに遅れがある。しかし、有機溶媒での溶解の心配が無い新しいシリカ系の円盤型微小共振器の達成により、エッチングの機械化後の評価は精密なハンドリングが不要となる見込みで研究全体の進捗として問題はない。 3.においては、エッチング機械化のためのシステムの構築と並行して、マルチパルス対応のインクジェットヘッドを導入およびシステムの構築を行った。システム完成までは、次年度の基板表面と吐出インクとの濡れの評価を行い、円盤サイズの縮小化に関しての基板選定などの知見を得た。また、計算量の多い複雑な円盤構造中のWGMを高速に計算できるハード、ソフトの構築を行い計算の準備が整った。加えて、形状の実験評価を先行して行い、エッジ角度が大きいほどレーザー発振しきい値が低下することを明らかにした。 以上より、研究全体としておおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度の当初の実施計画は、1.材料の光吸収損失の改善においる「熱耐久性評価」、2.表面粗さの改善における「エッチング最適化」、3.WGMの安定性向上における「円盤サイズ縮小化」および「WGM計算」である。 1.においては、前年度にて高い熱耐久性を持つ新しい材料の開発および、その材料によるインクジェット印刷のための吐出条件の最適化を実施して、次の評価を安定して行える準備が整っている。加えて、先行して実施した熱耐久性のワンポイント評価にて、当初の目標値を達成している。H29年度は、光励起強度を変化させて連続的かつ定量的な評価を行う。 2.においては、まずエッチングの機械化のシステムを早い段階で完成させる。評価においては、ナノ粒子の凝集体である新材料による円盤型微小共振器のナノポーラス状の表面の粗さをなめらかにするために、エッチングの際に溶解した土材の高分子材料がなめらかにコーティングするような条件を探りつつ評価を行う。これはシリカ系の円盤型微小共振器が有機溶媒によって溶解しないことに着目しており、当初の有機材料による円盤型微小共振器をソフトエッチングすることと観点が異なる。 3.においては、構築したマルチパルスのヘッドを有する印刷システムの稼働と最適化を行い、円盤サイズの縮小化(サイズコントロール)に適した条件を見出す。また、構築したWGM計算の環境を用いて本格的な評価を行い、光損失の小さなエッジ角度、厚さ、サイズを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
材料の光吸収損失改善において大きな進展があり、次年度にその研究成果の学会発表・論文発表が増える見込みとなった。それを補うため、当初新規導入予定であった位置制御用ロボットに関する配分を抑えたため次年度使用額が生じた。研究室の既存のロボットと併用するなどの工夫により研究遂行に問題が無いよう対処済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
材料の光吸収損失改善において大きく進展した研究結果について、追加的に行う学会発表・論文発表の旅費、学会参加費、論文投稿料に使用する。具体的には、国際学会1件、国際原著論文1件の追加発表を予定している。
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