本研究では、高解像度テラヘルツ波イメージングを実現するための有機非線形結晶の、結晶品質の可視化および非線形係数の計測に関する研究を行っている。これまでテラヘルツ波イメージングでは、アップコンバージョン技術によりテラヘルツ波の像情報を近赤外光に変換し、高感度な検出を実現してきた。これを更に高解像度、高感度、リアルタイムに行うため、本課題では有機非線形係数DAST内でアップコンバージョンと同時に第二高調波を発生させ、テラヘルツ波の像情報を可視域にまで変換する手法を提案した。 この手法において重要なのは、有機非線形結晶が広範囲に高品質であるという点である。テラヘルツ波の波長変換効率は10の-6乗と小さいが、結晶に入射するビームサイズを大きくし波長変換の領域を拡大することで、可視域カメラで観測可能な出力が得られると考えられる。対して有機結晶・新規材料は安定した結晶性を得ることが難しいため、結晶品質の簡便な確認手法と、波長変換の出力を決定する非線形係数の計測が重要になる。昨年度では単一波長のパルスレーザー光源を用いた計測で、ウェッジ角を持つ結晶品質の可視化と非線形係数の計測を実現し、研究成果が学術雑誌に掲載された。また、応用物理学会にて発表された。 加えて、より高精度な計測の実現および不定形な結晶形状を簡便に計測に向けて、連続光波長チューニングレーザーを用いた結晶計測を行った。連続光による非線形波長変換はパルス光に対してピークパワーが低いため、Erファイバー増幅器により高い平均出力の1.55 μm帯波長チューニング光源を作成した。その結果計測に十分な第二高調波出力が得られ、また、結晶の屈折率と波長チューニングの帯域に対する計測可能な結晶厚みの関係を明らかにした。今後、有機非線形結晶を始めとする様々な結晶計測が可能になると考えられる。得られた成果は学会および学術論文誌にて公表予定である。
|