本研究の目的は、量子化高抵抗を実現し、既存の高抵抗測定システムの信頼性の確認をすると共に、微小電流や高抵抗の測定の不確かさを低減するための基盤技術を確立することである。この量子化高抵抗を用いた世界各国の測定精度の比較を行うことで、従来の巻線抵抗や薄膜抵抗器を用いた場合よりもより小さい不確かさでの測定能力の比較確認が可能となりうる。また、ジョセフソン効果を用いた量子電圧標準、単一電子トンネリング効果などを用いた量子化電流と組み合わせオームの法則を成り立たせることで、各量子効果の解釈の正しさを実証する量子メトロロジートライアングル検証を行う上でも役立つと期待できる。 量子化高抵抗は、直流抵抗の標準に用いられる量子ホール素子を直並列に接続することで実現される。GaAs/AlGaAs二次元電子系に低抵抗のコンタクト抵抗が歩留まり良く得られるよう作製条件を出し、77個+11個の量子ホール素子を直並列に接続することにより1 MΩの量子化抵抗を実現した。前者の77個は、直列に接続されており、これにより12.9 kΩ×77個=993.8 kΩとなる。残りの11個は公称値を1 MΩに近づけるように直並列に組み合わされており、最終的な公称値は 約999999.966 Ω(1 MΩ×(1-約0.034 ppm))である。平成28年度は、素子の設計・作製を行い、またこの素子を用いて、従来の測定系の信頼性を0.1 ppmの桁で確認した。 平成29年度は、集積化素子の精密評価を韓国のグループと共同で行うと共に、イタリアのグループと信頼性の数値解析を行い、約8桁の3(30 ppb)で公称値に整合していることを実験的に確かめると共に、配線抵抗やコンタクト抵抗の実測値から計算された量子化抵抗値も十分小さな不確かさで公称値に整合していることを確認した。
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