研究課題/領域番号 |
16K17539
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
境 武志 日本大学, 理工学部, 助教 (20409147)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 高強度テラヘルツ波 / コヒーレント遷移放射 / コヒーレントエッジ放射 / コヒーレントシンクロトロン放射 / 電子線形加速器 / コヒーレントX線 |
研究実績の概要 |
日本大学電子線利用研究施設既存の電子線形加速器を用いたパラメトリックX線放射(Parametric X-ray Radiattion:PXR)ビームラインで用いられている短バンチ化された電子ビームを金属ターゲットに当て、発生するテラヘルツ波帯(THz)のコヒーレント遷移放射光(CTR)の基礎測定を進めた。施設側のビーム輸送系の改良、設置に伴い、CTRに加え、PXRライン偏向電磁石部分で発生するコヒーレントエッジ放射光(CER)、コヒーレントシンクロトロン放射光(CSR)が常時立ち入り可能実験室へ輸送路が確保されたため、常時立ち入り可能実験室での取り出し口部での基礎測定が可能となり、各光源に対して測定を行った。測定ではTHz領域で構成されたパワーメータを用いた出力強度の測定、スペクトル測定、Martin-Puplett干渉計を用いた周波数領域の確認、手持ちの簡易的な赤外カメラを用いた各基礎測定を行った。 前半は加速器施設側の機械装置トラブルがありビーム利用運転に支障が発生していたため、主な測定は後半からとなり、各種測定と光学系の構築テストに留まった。基礎測定では、輸送ビームラインに用いていたビューポートの材質に問題があること、ビーム不安定性によるノイズレベルの影響、取り出しポートに用いていたカプトン薄膜の干渉と思われるスペクトルの細かな周期構造の発生、THz波の取り出し後は、大気中で測定をしているため、大気中の水分の吸収による影響が確認でき、本測定のために細かな改良が必要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前半は加速器側の機器トラブルが立て続けに発生し、施設側のビーム利用運転に支障が発生していたため、主な測定は後半からとなった。前半は光学系の検討をすすめ、基礎測定は後半から行い、光学系全体のテストは次年度とした。施設側のビーム輸送系の改良、設置に伴い、常時立ち入り可能実験室へのTHz輸送路が確保されたため、常時立ち入り可能実験室で基礎測定を進めた。各測定をすすめると、輸送ビームラインのビューポートでの吸収率が高い事による強度低下、ビーム不安定性に起因するノイズレベルの影響、取り出しポートに用いていたカプトン薄膜の干渉と思われるスペクトルへの70MHz程度の細かな周期構造の発生、THz波の取り出し後は、大気中で測定をしているため、大気中の水分の吸収による影響など、今後の測定時に影響してくる問題点、改良すべき点が確認できた。測定系のための各問題がほぼ把握できたため、H29年度早々に対応予定である。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度前半には、輸送ビームラインのビューポート材質の問題対策をまずすすめ、手持ちの別の石英窓に交換を実行し、吸収の多い状態を回避することを行う。ビーム不安定性に起因するノイズレベルの影響に関しては、干渉計に用いていたリファレンス信号前のミラーで信号がすべて確保できていなかったことが考えられるため、口径の大きなミラーへの交換、光源輸送系で等方的な円偏光ではなく楕円偏光になっていると思われるため、Michelson干渉計での偏光を平均化した測定系への再構築、THz波の取出し後の大気中での水分の吸収による影響対策には、測定系周囲の乾燥空気置換などを進める予定である。またこれら対策と同時に前年度からの続きとして、光学系のテストを行う。前半から後半にかけて蓄積光学系のテストをはじめ、発生源となる加速器からの電子ビームの最適化も合わせ、高強度化を試みる。 H28、29年度の設計・製作、各基礎特性測定、蓄積系試験、蓄積光に対しての取り出し、等の研究成果に関して総括を行い、次年度以降へのユーザー応用利用も考慮した計画につなげる。
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