研究課題/領域番号 |
16K17542
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
原田 寛之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究職 (30601174)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 大強度陽子加速器 / レーザー荷電変換入射 / レーザー蓄積リング |
研究実績の概要 |
世界における加速器を用いた科学実験の一つとして、大強度陽子ビームの標的照射後に生成された2次粒子(中性子、μ粒子、K中間子、ニュートリノなど)を用いた実験があり、MW級の大強度陽子加速器が計画・建設・稼働中である。さらなる大強度出力への障害の克服に向けて、円形加速器への革新的な入射手法である「レーザー荷電変換入射」の実現を目指し、高出力でかつ高繰返しが可能な「高出力レーザー蓄積リング」の開発が本研究の目的である。 レーザー蓄積リングとは、対角線上に収束レンズと反射を兼ねたトロイダルミラー2枚と、反対の対角線上にレーザー入射用のビームスプリッターミラー(透過率~1%)と反射平面ミラーを配置する。レーザー光源より出力されたレーザーの1%程度がビームスプリッタ―ミラーによってレーザー蓄積リング内に入射される。周回毎に数%ずつ減衰するが、リング内に配置した増幅器によって減衰分を補うことによって「高出力レーザー蓄積リング」となる。 平成28年度は、レーザー蓄積リング構築に向け、Nd:YAGレーザー用ミラー一式を購入した。その際、特注のトロイダルミラーは高額となるため、予定の光路長より長いリング光学設計を行い、既製品にて対応可能とした。既存のNd:YAGレーザーと購入したレーザー出力観測用の出力モニタを用いて、各ミラーにおける反射率・透過率の各種基礎データの取得、特性の把握を行った。今後、レーザー蓄積リングを構築し、性能の実証を行う。 また、Nd:YAGレーザー用増幅器の導入に向け、レーザー通過時に発生する熱を除去するための冷却システムを構築した。今後、Nd:YAGレーザー用増幅器の開発ならびに導入を行い、リング内における増幅度の計測を行い、「高出力レーザー蓄積リング」を実証する。 また、平成28年度に行った外部発表により多くの興味を引き、他大学の研究者らと今後の研究協力が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「高出力レーザー蓄積リング」の開発に向けて平成28年度の計画では、①レーザー蓄積リングの光学設計、②各ミラーの購入、③観測系の構築、④各ミラーの特性把握、⑤レーザー蓄積リングの構築、⑥レーザー蓄積リングの実証、⑦増幅器の設計を完了させる予定であった。 上記項目の①②③⑦は完了したが、保有していたNd:YAGレーザーの故障によりレーザー本体の修理が必要となったため、レーザーを用いた実際の実証期間が1か月程となり、項目④⑤⑥の内、④の各ミラーの各種基礎データ取得と特性の把握までの完了となった。項目⑤と⑥が完了していないが平成29年度に早期完了させる予定である。 また、平成29年度に行う予定であった⑧増幅器の冷却システムを前倒しで構築が完了している。 以上より、進歩状況としては「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究の基本方針として、納期のかかる製作物や購入品は早期契約を完了し、製作中に並行して、開発や試験を行うことで効率的に研究を推進する。 平成28年度に故障したレーザー本体の修理が完了し、開発環境は十分整っている。 平成29年度では、平成28年度に行う予定であった①レーザー蓄積リングの構築、②レーザー蓄積リングの実証を早期に完了させる。並行して、③増幅器システムの製作、④短パルスレーザー観測装置の購入を行い、製作後⑤増幅器単独試験を行う。増幅器の性能確認後、⑥レーザー蓄積リング内へ増幅器の配置、⑦高出力レーザー蓄積リングの実証試験を行う。 また、平成28年度に行った外部発表により多くの興味を引いた結果、他大学の研究者らとの研究協力が確認されたため、平成29年度は他大学の研究者らとも連携して研究開発を推進する。
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