研究課題/領域番号 |
16K17546
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
的場 史朗 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別助教 (80535782)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ミュオン / 移動度 / 移動管法 / 運動量移行断面積 / 陽電子 / 量子ビーム / 軌跡検出器 |
研究実績の概要 |
移動管法を用いて気相中のミュオン移動度測定を行う。 測定された移動度からミュオン-中性気体分子間の熱エネルギー領域における運動量移行断面積を導出し、希ガスや二原子分子衝突におけるベンチマークデータを作成する。気相中のミュオン移動度から得られた断面積と非経験的分子軌道法によるポテンシャルエネルギー曲面を用いた古典的及び量子力学的軌道計算から導出した断面積とを比較して、量子力学的散乱現象に起因する断面積の振動構造を検証する。 平成29年度の研究期間では、シンチレーションファイバー軌跡検出器及び移動管真空槽の開発を行い、ミュオンビームを用いたヘリウム気体中におけるミュオン停止位置分布の測定を実施した。正ミュオンからの崩壊陽電子が移動管にリボン状に巻かれた1mm角のシンチレーションファイバーを通過して発生したシンチレーション光は、ファイバー末端に接続されたアバランシェフォトダイオードによって検出される。シンチレーションファイバーリボンを二層に巻いて内外層間でコインシデンス計測を行うことで、移動管の軸方向に射影した崩壊陽電子の発生場所、すなわちミュオン停止位置が得られる。昨年度製作した内層のみの試作機に外層部を追加し、軌跡検出器が完成した。 J-PARC物質・生命科学実験施設ミュオンSラインに移動管真空槽と軌跡検出器を設置し、気体中のミュオン停止位置観測実験を行った。約2.7 MeVの正ミュオンビームを一気圧のヘリウム気体で満たされた移動管に入射させ、停止した正ミュオンからの崩壊陽電子の軌跡を測定した。ノイズとなるビームライン中で生成した陽電子の信号はファイバー間でのコインシデンスにより取り除かれ、ミュオン停止位置分布を測定することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に製作したシンチレーションファイバー軌跡検出器の試作機に外周部のシンチレーションファイバーリボンを取り付け、ミュオン停止位置測定のための軌跡検出器が完成した。ミュオンビームラインを用いたミュオン停止位置測定に成功し、当初の研究計画の通りに二年間で装置開発はほぼ完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究期間では、より低エネルギーのミュオンビームを用いて精度の良い停止位置分布測定を行い、電場を印可した移動管を用いて移動度測定を開始していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
移動管と軌跡検出器の製作において真空機器等を可能な限り既存のものを使用したので使用額が予定より下回った。
|