本研究では,移動管法を用いて気相中のミュオン移動度測定を行うことで,ミュオン-中性気体分子間の熱エネルギー領域における運動量移行断面積を導出することや,量子力学的散乱現象に起因する断面積の振動構造を検証することが目的である. 移動管内の緩衝気体中でミュオンから崩壊した高速陽電子を検出する軌跡検出器付き移動管を製作し,J-PARC物質生命科学実験施設ミュオンSラインにて1気圧ヘリウム気体中における正ミュオン停止位置分布測定を行い,運動量移行断面積を導出した.その結果,室温領域のヘリウム気体中における衝突現象ではミュオンは水素の同位体と見なしても差し支えないことが示唆された.
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