研究課題/領域番号 |
16K17548
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
河口 彰吾 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10749972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射光X線回折 / その場粉末回折測定 / 結晶構造解析 / Metal-Organic Framework |
研究実績の概要 |
多孔性配位錯体は規則的に配列したナノ細孔を持つ結晶物質であり、極めて高いガス吸着能および選択的ガス吸着能を持つ。本研究では、その多孔性配位錯体が持つナノ機能空間へのガス吸着・脱着過程を明らかにするために、秒以下の時間分解能を持つその場構造計測システムの構築を目的とし、大型放射光施設SPring-8の粉末結晶構造解析ビームラインBL02B2において, 6台の一次元半導体検出器とガス圧力制御システムが連動した, 2θ領域がギャップレスなその場粉末構造計測システムの開発を行った。粉末構造計測システムにおいては、標準試料を用いて回折データの補正方法を確立し、100ミリ秒以下の時間分解能で計測可能な測定環境を構築した。一方、ガス圧力制御装置には圧力計、エアーバルブ、マスフローコントローラ、ターボ分子ポンプなどを導入し、回折実験と同期できるように制御ソフトウェアを作成した。また、溶液その場測定についても、溶液滴下の導入と試料セルの開発により、半導体検出器と同期した測定環境を構築した。これらの装置を用いて、酸素、窒素ガス圧力制御下での多孔性配位錯体に対するその場粉末回折測定を行った。これらのガス圧力制御下時間分解粉末回折実験では、degas相とadsorption相の間に、時間および圧力に依存する吸着中間相を見出した。現在、この相に対してMEM/Rietbveld法による構造解析が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、当初の目的計画どおり、半導体検出器を利用したその場粉末構造計測システムの開発および, その構造計測システムと連動したガス圧力制御装置の開発は完了している。これらの装置論文を執筆し、現在、投稿中である。一方、多孔性配位錯体のガス吸脱着過程における時間分解粉末回折実験もスタートしており、これまで、予想しなかった静的な構造計測では観測されなかった中間相が観測されている。この相に対する結晶構造解析は現在進行中である。以上より当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、昨年度、多孔性配位錯体のガス吸脱着過程で観測された吸着中間相についてさらなる知見を得るため、様々なガス種、圧力、時間の条件下で時間分解粉末回折測定を実施する。そして、得られた回折データより、未知結晶構造解析、リートベルト法による結晶構造解析を行い、吸着・degas相やその他条件で得られた構造との比較により、ガス吸着・脱着過程における構造変化の機構を明らかにし、本研究目標の達成を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,当該研究が当初の計画よりも進展し,装置の細微な仕様変更および新たに得られたデータ解析や取りまとめに時間を費やした為,物品費および旅費を一部繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の予算は主に,消耗品費(ガス真空ライン、ガラス器具、回折測定用の試料セル)および旅費(研究成果報告,情報収集,研究打ち合わせ)として使用する予定である.
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