研究課題/領域番号 |
16K17549
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
車谷 麻緒 茨城大学, 工学部, 准教授 (20552392)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破壊力学 / 鉄筋コンクリート / FEM / ひび割れ / デジタル画像相関法 |
研究実績の概要 |
独自に定式化した破壊力学に基づく損傷モデルを3次元破壊シミュレーション手法を構築した.このシミュレーション手法は,内部構造の幾何形状を忠実にモデル化することにより,内部構造の影響を考慮した詳細な破壊挙動を再現できる.ただし,メッシュ分割を行った際に,要素数が膨大になるため,大規模シミュレーションへの対応が必要になる.そこで,領域分割に基づくプロセス並列化を解析プログラムに適用し,大規模破壊シミュレーションが可能な手法に拡張した.まず,計算効率について検討を行ったところ,通常の並列有限要素解析と同様の並列化効率でることを示した.これにより,有限要素解析が適用可能な問題に対して,本手法も適用可能であることになる.次に,要素サイズを小さくしていき,要素サイズや要素数に関する解析結果の依存性について検討を行った.その結果,鉄筋コンクリートの破壊挙動の再現において,本手法は要素サイズにほとんど依存しないことを検証した. 破壊シミュレーションの妥当性を検証する方法として,本研究ではデジタル画像相関法をひび割れ進展の計測・可視化に適用することを考えている.デジタル画像相関法を用いて,試験体のひずみとひび割れを計測するには,その条件設定と計測精度について検討する必要がある.本研究では,コンクリートの圧縮試験に対して,デジタル画像相関法の計測精度について検討を行った.ひずみの計測については,相関を評価する領域の大きさとその領域の重複有無が計測精度に与える影響を示した.ひび割れの計測と可視化については,相関を評価する領域を重複させて,計測点を増やす方法が有効であることを示した.また,3次元破壊シミュレーション結果の新しい立体可視化手法として,3Dプリンターによる造形化を試行し,基本的な検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題のひとつに,鉄筋コンクリートの3次元破壊シミュレーションを効率化がある.これに対して,領域分割に基づくプロセス並列化を解析プログラムに適用し,大規模破壊シミュレーションが可能な手法に拡張し,通常の有限要素解析と同様の効率性が実現可能であることを示した.また,大規模な破壊シミュレーションに必要な要素サイズに関する検証も行い,解析結果は要素サイズにほとんど依存しないことを示した. 破壊シミュレーションの妥当性を検証する方法として,デジタル画像相関法の計測精度について検討を行った.コンクリート試験体の圧縮試験に対して,ひずみの測定精度を検証し,さらにひび割れの計測と可視化も可能であること示した.今後,破壊シミュレーションの妥当性の検証において,デジタル画像相関法が有効であることを示した. 3次元破壊シミュレーション結果の新しい立体可視化手法として,3Dプリンターによる造形化を試行し,基本的な検討を始めることもできた.
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今後の研究の推進方策 |
鉄筋コンクリートの3次元破壊シミュレーションに関して,大規模化までの基本的な検討は終えた.より複雑な破壊挙動を再現するには,大きな変形までの解析できるよう,有限ひずみ問題に拡張する必要があり,現在その検討を行っている.また,破壊挙動が複雑になると,一度開口したひび割れが再度閉口する場合があり,このような挙動を再現するには,ひび割れの再接触が表現できるよう,損傷モデルを拡張する必要がある.今後は,損傷モデルの拡張も行っていく予定である. 破壊シミュレーションの妥当性を検証するためのデジタル画像相関法に関して,計測条件などの基本的な検討を終えたので,部材レベルを対象に,デジタル画像相関法と破壊シミュレーションの結果を比較し,破壊シミュレーションの妥当性を検証するとともに,デジタル画像相関法の有用性についても検討を行っていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
画像計測に使用するカメラの購入と,シミュレーション結果の可視化ソフトウェアの購入のうち,どちらにしてもやや金額が不足したことと,どちらを先に購入すべきかを急いで判断する必要がなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
画像計測と数値シミュレーションの研究を同時に進め,画像計測に使用するカメラの購入とシミュレーション結果の可視化ソフトウェアの購入を計画している.
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