研究課題
現代科学の多くの分野で,長時間スケール数値計算の需要が高まっている.そのためには,微分方程式の数理的/物理的性質(例えばエネルギー保存則)を活用した構造保存数値解法が適切だが,計算機パワーのハード面の成長に伴い,現場のニーズも多様化・大規模化している現在,精度と計算コストのギャップといった問題がこれまで以上に顕著化している.これらの問題に対して,現状では,各分野の専門性や経験によって解決案が研究されているが,本研究では,より数理的/分野横断的な立場から,汎用性の高い高速かつ高精度な並列構造保存数値解法を開発することを目的とする.本年度はこの目的に対して,昨年度に引き続いて,主に,微分方程式を離散化した際にあらわれる線形方程式の性質やその解法に関して研究を行い,さらにエネルギー保存則や散逸則に着目した研究だけでなく,splitting(分離型)解法と呼ばれるクラスの構造保存数値解法をDirichlet境界条件下の偏微分方程式に適用すると,精度の劣化が生じる(期待通りの精度が達成できない)という問題に対して,精度の劣化を回避する方法を検討した.これは,昨年度までは空間一次元の問題に特化したものであったのを,空間高次元問題や新しいタイプの偏微分方程式対して拡張を検討したものである.他にも,構造保存数値解法の観点から,深層学習で必須の誤差逆伝播法やデータ同化でよく用いられるアジョイント法の実装に関する提案も行った.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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