最終年度である2017年度は,前年度に構築した圧縮性流体と固体の熱連成計算手法について,固体が移動する問題へ応用すべく改良を行った.提案した計算手法では,計算セル内に含まれる各相の体積割合に基づいて平均化された基礎方程式に対し,低マッハ数の非等温流れを高速に計算可能な圧縮性流体解法を適用する.したがって,本手法では固体形状が複雑な場合や移動するような場合でも,流体の密度変化を考慮しつつ,単純な直交構造格子を用いて計算を行えるという特徴がある.本年度では特に,移動する固体周りの流れを妥当に計算するために,各相の運動量を平均化する計算段階について改良を行った.また,任意形状の移動固体を計算するために,固体を2次元計算の場合は三角形要素,3次元計算の場合は四面体要素の集合体として表現し,各計算セルをさらに細かく分割したサブセルがこの三角形あるいは四面体要素に含まれるかを判定して計算セルにおける各相の体積割合を算出する手法(四面体サブセル法)を導入した. 改良した手法の適用性を確認するために,まずは矩形キャビティ内で回転する三角形固体周りの熱対流を計算した.この計算では,三角形固体の中心部と周囲の壁が,それぞれ一定温度で加熱,冷却される.以上の計算を行った結果,回転する三角形の頂点付近で熱対流が発達していく様子や,固体の物性値を変えた場合に流況や温度分布が変化すること,与えた温度差に応じた流体の密度変化を計算できることを確認した.また,放熱フィン付きの回転円筒を模擬した歯車状の回転固体周りの熱対流を計算し,任意形状の移動固体へ適用可能であることを確認した.
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