本研究の目的は、アラケロフ幾何学において「アデール因子と基底条件の組」に付随する数論的体積が、基底条件に沿って微分可能であり、その微分係数が数論的制限体積で与えられることを確立することである。さらに、それを用いて、数論的正値性に関する種々の未解決問題の解明へと応用することである。 昨年度、組に付随する数論的体積関数の、巨大な組のなす錐の内部における、基底条件方向の両側微分係数が数論的制限正値交点数に等しいことを示し、プレプリント「Differentiability of the arithmetic volume function along the base conditions」(http://arxiv.org/abs/1807.11680) として公表した。本年度は、この結果について、北京大学(BICMR)での「Geometry of arithmetic varieties」、京都大学での「Intercity Arakelov Seminar 2019」、IMJ-PRGでの「Seminaire de theorie des nombres」において研究発表を行った。また、数論的体積関数の境界における片側微分係数が数論的制限正値交点数に一致することの証明も得た。さらに、代数曲線上の場合に組に付随する高さ関数の定義のアイデアを得た。 また、「On subfiniteness of graded linear series」(Huayi Chen氏との共著論文) が European Journal of Mathematics に、「Adelic Cartier divisors with base conditions and the continuity of volumes」(単著論文) が Kyoto Journal of Mathematics に、「Adelic Cartier divisors with base conditions and the Bonnesen-Diskant-type inequalities」(単著論文) がTohoku Mathematical Journal にそれぞれ受理された。
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