研究実績の概要 |
量子変形カレント代数のランクが1のもの (sl_2に付随したもの) の有限次元既約表現について研究した。 ランク1の量子変形カレント代数は, パラメータ q と Q を持っているが, Q=0 のときは, 量子ループ代数の”多項式部分”とみなすことができ, 基本的には量子ループ代数の表現論と同様なことが成り立つ。そこで重要となるのは, sl_2 に付随した量子群への evaluation 準同型の存在と, 量子変形カレント代数 (Q=0 の場合)上の余積構造である。これらを用いて, Q=0 の場合の有限次元既約表現の分類と, その最高ウェイトの明示的な記述を与えることができた (上述のように Q=0 の場合はほとんど量子ループ代数の場合と同様である)。 一方で, Qが0でない場合は, おそらくその上に余積構造が存在しないであろうことが分かった。この余積構造の欠落が表現論を展開する上で大きな障害であったが, 余積構造の代わりに, Qが0でない量子変形カレント代数は, Q=0の量子変形カレント代数上の余加群代数となることが分かった。まだ完成はしていないが, この構造を用いて有限次元既約表現の同型類の分類への道筋をつけることができた。また, 既約表現の最高ウェイトの明示的な記述も, Q=0 の場合の記述と, この余加群構造を用いると得ることができることが分かった(実際には, 一部証明が完成していない部分もあるが, それは技術的な問題で, すぐに解決できることだと思っている)。 また, Q=0の場合の量子変形カレント代数上の余加群代数としての構造が見つかったことにより, 新たな問題が提起され, また多くの応用が期待できる状況になったことは特に意義があることだと思っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Q=0 の場合の量子変形カレント代数上の余加群代数としての構造が見つかったことにより, 表現論を展開する上で重要な道具が手に入ったことになり, 特に有限次元既約表現の同型類の分類に向けた道筋がはっきりした。 また, それに関連して, 新たな問題も得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
ランク1の場合の量子変形カレント代数の有限次元既約表現の同型類の分類を完成させ, それを高ランクなものまで拡張する。 その過程で, 余加群代数としての構造等についてより詳しく調べ, 話をまとめるとともに, 今後の課題について整理していく。
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