研究実績の概要 |
2016年度の11月末までは、主に頂点代数の幾何学的フォーミュレーションであるchiral algebraと代数曲線の付随するモジュライ問題との関係を研究した。具体的には 1. 頂点Poisson代数の変形量子化、2. 変形問題のJacobi複体とchiral Chevalley複体、3. boson-fermion対応のfactorization spaceによる理解、の3項目を研究した。1と2ではLie代数におけるChevalley複体のchiral代数類似をoperadの理論を応用して導入し、その応用を考えた。特にあるクラスの頂点Poisson代数の変形量子化の一意性を示した。3はchiral代数と同値であるfactorization spaceの枠組みを使って、古典的な頂点代数の同型であるboson-fermion対応の別証明を与えた。以上の内容を次のプレプリントにまとめた。1. Deformation quantization of vertex Poisson algebras, arXiv:1607.02068. 2. Jacobi complexes on the Ran space, arXiv:1608.07472. 3. Boson-fermion correspondence from factorization spaces, arXiv:1611.06100.
また関係分野のレビュー論文Factorization spaces and moduli spaces over curvesを執筆した。これはJosai Mathematical Monographsから出版された。
後半は主にTuraevのskein代数とHall代数の関係を研究している。Riemann面の基本群の表現に付随したGoldmann Lie代数の変形がTuraevのskein代数であり、種数が低い場合は代数曲線の連接層に付随したHall代数と代数同型であることが知られている。この現象をホモロジー的ミラー対称性の観点から理解することを目標とした研究を進めており、口頭発表を数回行った。
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