研究実績の概要 |
2018年度は次の三つの研究課題に取り組んだ. (1) 古典的導来Hall代数 (2) Macdonald函数とAbel曲面上のHall代数 (3) 導来Hall代数の幾何学的構成 (1)はToenが2007年に導入した導来Hall代数に関する研究である. 導来Hall代数とは複体の圏におけるRingel-Hall代数の類似物で, 複体の圏のモデル構造を用いてcofibrationを数え上げることで構造定数が定まる. この導来Hall代数の構成をJordan箙の表現の複体の圏に適用したものを古典的導来Hall代数と呼ぶ. これは導来Hall代数の中でも最も単純なものだが, 今まで具体的な研究はされていなかった. 私は下地涼介氏 (名古屋大学大学院多元数理科学研究科修士課程) との共同研究で, 古典的Hall代数と対称函数環との同一視を用いて研究し, 古典的導来Hall代数が古典的Hall代数のHeisenbergダブルであることを示した, また応用として, Hall-Littlewood対称函数に上手く作用する頂点作用素を古典的導来Hall代数を用いて再構成した. 以上の結果はプレプリント R. Shimoji, S. Yanagida, "A study of symmetric function via derived Hall algebra", arXiv:1812.06033で発表した. (2)は白石潤一氏と野海正俊氏が2012年に構成した双スペクトル性を持つMacdonald対称函数を, 楕円曲線の直積上のHall代数を用いて幾何学的に実現するものである. この結果は学会発表1および学会発表2で発表した. (3)は2019年度以降も進行中の課題で, (1)で触れたToenの導来Hall代数を複体のモジュライ空間上の構成可能層を用いて幾何学的に実現するものである.
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