研究課題/領域番号 |
16K17572
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
石塚 裕大 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (50761136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数論的不変式論 / 概均質ベクトル空間 / 線形行列式表示 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、まず数論的不変式論における幾何的対象や代数的対象と線形表現の軌道の対応の系統的な一般化、数論な応用である。本年度は、対応の一般化のための枠組みについて、直接的・間接的な方法で研究し、いくつかの部分的な進展を得た。これと並行して、前平成27年度後半に取り組んだ、すでに構成された対応の具体的な計算アルゴリズムについて研究し、進展が見られた。具体的には以下の通りである。 ・対称性を持つ線形行列式表示を得るアルゴリズムについて研究を進め、特殊な場合についてはアルゴリズムを得た。手法としては、前年度の行列式表示の計算アルゴリズムと同様であるが、前年度のものと比較してより深い内部構造を使用する必要がある。この深い内部構造については先行研究でも十分な記述がなされておらず、一般の平面曲線へアルゴリズムを拡張する場合には多重線形代数的な手法が必要になる。これは多重線形代数的な手法がこの研究全体にわたって重要であることを示唆する一つの結果である。 ・谷口隆氏、石本和基氏らと共同で、いくつかの概均質ベクトル空間の軌道の有限体上における分類と、それらの軌道の特性関数のFourier変換についての研究を行った。これは対応の一般化における間接的な方法に該当する。より具体的な意義としては(研究結果というよりは研究手法の意義になるが)、極小複体の方法がうまく働かない極端に退化した軌道についての取り扱いにおいても、多重線形代数的な手法の有用性が示唆されたことが挙げられる。 ・伊藤哲史氏との共同で、ヘッセ型の平面三次曲線について、一般化クリフォード代数を用いた行列式表示の計算アルゴリズムについての研究を行い、部分的な結果を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究で得られた知見は、代数的対象、幾何的対象及び線形表現の軌道という三つ組のなす関係性について、多方面からの示唆を与えるものであると言える。しかし自身の研究の目的である対応の系統的な構成の部分については、加えるべき付加構造などの枠組みを見出せておらず、進展として十分であるとは言い難いと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた多重線形代数的手法の有用性への示唆を元に、観察されている現象--例えばHilbert numeratorの同じい多様体の関数層や、その上のUlrich束などに見出される共通の構造--の適切な一般化・公理化を試みる。それが難しい場合は、必要以上に一般化を試みず、すでにある程度理解が進んでいる対象について対応の構成を厳密に行うことを優先したい(これは本年度の反省点でもある)。また高次合成則の対応とArtin--Schelter代数の対応を基に、代数的構造と軌道の対応についてもより明確に記述していく。可換代数の学会にも参加するなどして、情報収集も怠らない予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度以降の研究費に当てる予定であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度と同様に、研究成果の発表や、専門家・共同研究者との研究打ち合わせ、研究集会や勉強会などへの情報収集、専門書等の研究資料の購入、電子機器の購入に使用する予定である。
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