本研究の問題意識は、数論的不変式論における幾何的対象や代数的対象と線形表現の軌道の対応の系統的な一般化を目指し、それを数論的な問題に応用することである。本年度は、昨年度以前の問題を発展させ、数論的な応用(幾何的対象の局所大域性)、およびそのために補助となる問題(余正則空間の指数和)についての結果を得た。 ・平面四次曲線の局所大域性の結果について整理し、種数4の曲線(いわゆる空間六次曲線)に結果の一部を拡張した。具体的には、平面四次曲線の双接線に対応する概念として、空間六次曲線の三重接平面と呼ばれるデータを考察し、「p進体・実数体ではその上で定義された三重接平面が見つかるが、有理数体上では三重接平面が存在しない」という空間六次曲線の例を構成した。現在は論文を執筆中である。今後もこの方針で研究を進める予定である。 ・一昨年度に得られていた二元四次形式の指数和に関しての部分的結果を、古典的な不変式論の結果を用いた別の手法で、完全な解答に仕上げた(伊藤哲史氏(京都大学)、谷口隆氏(神戸大学)、Stanley Yao Xiao 氏(トロント大学)、Frank Thorne 氏(サウスカロライナ大学)との共同研究)。これに続き、概均質ベクトル空間の場合にも適用した解析的手法を検討し、大きな問題となる点を解決した上で、得られる応用を整理した。現在は解析的手法の細部について検討中である。 ・二元四次形式の空間に引き続いて、三元三次形式の空間の指数和に関しても検討し、部分的な結果を得ている(伊藤哲史氏、谷口隆氏との共同研究)。引き続きこの空間については研究を進める予定である。
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