研究実績の概要 |
Q-Fano 3-foldの変形について, その倉西空間やQ-smoothingの存在を調べていた結果を応用して特異点の数の評価を与えた. Calabi-Yau(CY)多様体に関する大問題として, その位相型が有限かどうか, というものがあるが, CY多様体の退化の双対複体の情報を固定したときの有界性を研究した. 関連して有理連結多様体の超曲面として現れるCY多様体の有限性も調べている. また, Rome大学のTasin氏, Pizzato氏との共同研究で重み付き完全交差上で有効非消滅予想を研究し, FanoおよびCYの場合に予想を証明した. またその過程で準滑らかな完全交差の判定法を一般の余次元の場合に見出した. これはプレプリントサーバーarXivにおいて公開し, 専門誌に投稿した. Bayreuth大学のCoughlan氏との共同研究でCalabi-Yau多様体上のアフィン錐体の変形理論を研究し, K3曲面上の錐体の場合にPinkhamの楕円曲線上の錐体に関する結果の類似を得た. また, アフィン錐体の変形と射影多様体と線束のペアの変形についても議論し, アーベル多様体上の錐体がrigidであることも示した. この研究を論文にまとめてarXivにて公開, 投稿もした. 大阪大学の大川氏との共同研究では点付き安定曲線のモジュライ空間の非可換変形を研究し, genericな場合に非可換変形に対応するコホモロジーが消えることを確認した. トーリックFano多様体の変形については, まず重心が0の場合に倉西空間が滑らかでない例を探しているが, 3次元で孤立特異点の場合には見つからないことを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請以前に得られていた結果をプレプリントとして公開するために時間がかかり, 平成28年度の終わりになりようやく公開することができた. その途中で重み付き完全交差についての一般的な判定法が得られたり, アフィン錐体の変形についての記述を整理することができたので, その点はよかった. トーリック多様体の変形については計算が遅れているが, 平成29年度は意味のある計算をしたい. 一方, Calabi-Yau多様体の退化とその有界性の関係は予期しておらず, 3次元の有理連結多様体内のK3曲面の有界性など意外な結果も得られ始めている. 以上の点を総合的に踏まえ「おおむね順調」とする.
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