研究実績の概要 |
今年度は前年度に得られた橋本氏との共同研究の成果を各地で口頭発表を行った。 前年度の研究において有理的な3-foldをK3曲面に沿って貼り合わせた正規交差多様体の潤滑化として, ケーラーでないCalabi-Yau 3-foldを構成した。似たような状況で、アーベル曲面に沿って3-foldを貼り合わせた場合や、4次元以上の場合などを考えたが、現在のところインパクトのある例の構成には至っていない。上の構成で使った3-foldは対数的Calabi-Yau多様体と呼ばれるものであるが、その一般的な性質についても調べた。極小モデル理論を使って、わかりやすいモデルに変換できないか、思案中である。これらの研究の動機は、射影的Calabi-Yau 3-foldの位相型が有限か、という問題にある。この問題の解決には程遠い状態ではあるが、例の構成の試行により状況の理解が深まったと思う。また、toroidal crossing多様体と呼ばれる、正規交差多様体よりも一般的な特異点をもつ可約多様体の変形理論について、Filip氏を招聘し講演などを通じて議論を行った。 EPFLのSvaldi氏やMilano大学のTasin氏を訪問し、対数的Calabi-Yau多様体や重み付き完全交差に関する議論も行った。伊藤氏との議論によりK-安定なFano 3-foldの変形についても調べた。 トーリック多様体の変形理論の新たな展開として興味深い問題である。
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