当研究では、リーマンゼータ関数やディリクレL-関数をはじめとする、数論的な概念に関連する各種L-関数の解析的性質の解明を目的とした。これらのL-関数の零点の分布や大きさを調べることは、素数分布などの整数論の基礎的な問題に結びつく重要な課題である。 研究期間3年のうち、最初の2年は主にリーマンゼータ関数の自明でない零点の分布を研究した。自明でない零点全体のうち、どの程度の割合の零点が関数等式の中心線Re(s)=1/2上にあるのかを評価し、論文にまとめて出版した。 また、デデキントゼータ関数の絶対値の冪の中心線上における積分の下からの評価を行い、有理数乗の場合の既存の結果が実数乗の場合でも同様に成り立つことを示した。この結果も論文にまとめ、海外のジャーナルに掲載された。更に、ディリクレL-関数と保型L-関数のディリクレツイストがある領域で同時に非消滅になるような指標の存在について研究を行い、この結果も論文にまとめ、海外のジャーナルに掲載が確定した。 最終年度は、L-関数の中心点における非消滅を証明するための第一段階として、2次指標に付随するL-関数の中心点における2乗平均の漸近的振る舞いについて研究した。主にYoungが1乗平均と3乗平均の漸近公式を導く際に用いた手法を援用し、2乗平均の漸近公式で誤差項が十分に小さいものを導出した。この結果についても論文にまとめ、現在は海外のジャーナルに投稿中である。 また、それぞれの研究成果に関しては、京都大学、上智大学、大阪大学、愛媛大学など全国各地の大学で研究発表を行った。
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