研究課題/領域番号 |
16K17579
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
杉山 倫 東京電機大学, 工学部, 助教 (20633233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 数論幾何学 / 代数的サイクル / Reciprocity sheaves / Chow group with modulus |
研究実績の概要 |
(1) 昨年度に引き続き、ある種のK群を用いて、Reciprocity層に対するテンソル積についての研究を行い、加法群2つのテンソル積が加法群とケーラー微分形式の群の拡大として捉えられることを見出した。これは全く新しい結果であり、Reciprocity層のテンソル積がさらに多くの情報を有している可能性を示唆するものであった。しかし、これらの計算の一部は群としてのものであり、層として正しいことまでは示せていない。ただし、標数についての仮定が不要な箇所もあり、これに関しては非常に良い考察を得たと言える。 (2) 加法群2つのテンソル積の構造を応用して、ある具体例について、モジュラス付き0-サイクルのチャウ群に対する一般アルバネーゼ核がケーラー微分形式の群と同型となることを示した。特に基礎体が複素数体である場合については、全く別の方法でアルバネーゼ核が消えないことが示されていたが、その結果の具体例について精密化した形である。 (3) 以上の結果を集会で発表し、また論文をarXivに置くとともに、専門雑誌に投稿した(掲載に関する結果は現時点では出ていない)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Reciprocity層のテンソル積の研究は、昨年度解決できなかった加法群2つのテンソル積の構造をはっきりさせた点および、その様子が予想していたものよりも興味深いものであったことから、良い進展となっていると言える。また、予想よりも興味深い結果であったことから、新たな研究課題も見出せた。一方で、テンソル積の計算をモジュラス付き0-サイクルのチャウ群に応用できた点も良い進捗状況と言える。しかし、当初の計画と比較し、層としての結果に至っていないことおよび、高次のモジュラス付きチャウ群に対する研究へ進めていない状況から、その先のモチーフとしての構造解明に向けて考えた時、やや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後もReciprocity層およびモジュラ付きサイクルの研究を継続していく。ただし、関連する研究に様々な進展・変化があったことに注意し、柔軟に研究計画の変更をするなど、対応していくことが必要であると考えている。 例えば、これまでに得ている結果の数論への応用へ取り組むことや、非特異多様体ではなく特異な多様体へと視点を変えて研究するなどである。この場合、過去に扱ったことのある単純正規交差多様体が適切な対象となると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画段階で予定していた海外での研究集会について、参加を見送ったことが、次年度使用額が生じた理由である。
次年度使用額は5月にドイツで行われる研究集会参加のための旅費として使用する予定である。今年度申請した分については、提出した計画通りの運用を考えているが、所属機関の変更に伴い、研究以外の業務が大幅に増える状況にあるため、柔軟に対応していく。
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