研究課題/領域番号 |
16K17587
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
今城 洋亮 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (30742902)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Special Lagrangian / 深谷圏 / 幾何学的測度論 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標の1つは「与えられたCompact Special Lagrangian Lに対しLに充分近い(他の)Special Lagrangianをすべて決定する」ことである。ここで「近い」は幾何学的測度論の意味の「近い」である。 今年度はLが非特異だが(2以上の)重複度を持つ場合を研究した。これは幾何学的測度論のAlmgrenの定理(一般のarea-minimizing currentの特異集のHausdorff real co-dimensionは2以上)の証明とも関わるが私が今用いている手法は幾何学的測度論とはあまり関係なく、むしろ深谷圏を用いる。Special Lagrangianの研究においてこのように重複度が高い場合を考えたのは本研究が初めてと思う。 今、以下の定理の証明を書いている(Mohammed Abouzaidとの共同研究、近々論文として投稿予定)。 定理「Lの基本群が可解ならばLに充分近いCompact Special Lagrangianは全てSmooth perturbationとして得られる」 証明のアイデアは以下の通り。Lに充分近い任意のCompact Special Lagrangian L'を考える。深谷、Seidel、SmithおよびAbouzaidの手法によりL'はLの基本群の有限次元表現rを定め且つ導来深谷圏におけるL'の同値類はrにより決定される。Lの基本群が可解ならばrは三角型でありrank-oneの部分表現を持つ。その部分表現はLのSmooth perturbation L''を定める(McLeanの定理)。最後にThomas-Yauの定理を用いてL'=L''を証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深谷圏を用いたSpecial Lagrangianの研究を始めたのはThomas-Yauの一意性定理が最初だがJoyce、Oliveira dos Santosと私の共同研究において初めて具体的な応用が与えられた。今年度の研究方法はThomas-Yauおよび上記の共同研究の方法と原理的には同じである。
一方上の「研究実績の概要」に述べた通り今年度の研究は幾何学的測度論のAlmgrenの定理の証明とも関係あるが現時点の私の研究と幾何学的測度論の関係は明らかでない。今の所、深谷圏のObjectはSmoothなLagrangianあるいはImmersed Lagrangianにかぎられており、また幾何学的測度論は深谷圏が定義される前から研究されているがAlmgrenの定理はいまだに難解である(de LellisとSpadaroが最近新しい証明を書いたが)。これは長期的課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
深谷圏については既に色々な研究があり、その方面からのアプローチともう1つとして幾何学的測度論からのアプローチと両方必要と思う。深谷圏がよくわかっている例としては2つ以上のSpecial Lagrange部分多様体のPlumbingがある。すでに紹介したJoyce、Oliveira dos Santosと私の共同研究もPlumbingの例だが、そこでは複素ベクトル空間のSpecial Lagrangianで無限遠において重複度1の2枚のSpecial Lagrangian planeのUnionに漸近するものを決定した。今後の課題として例えば重複度2以上の場合に同じような定理を証明することが考えられる。幾何学的測度論の方面からはAlmgrenの定理の証明、特にCentre manifold methodの応用を考えたい。de LellisとSpadaroの論文ではCentre manifold methodが改良されている。具体的には3次元複素ベクトル空間の中の2枚のSpecial Lagrangianで1次元のIntersectionを持つ場合の特異点におけるTangent ConeのUniquenessを考えてみたい。
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