研究期間を通して、粗Baum-Connes予想に関わる粗幾何学について研究を進めた。粗Baum-Connes予想は、Novikov予想など微分トポロジーへの応用があるということ、および、ヒルベルト空間への粗埋め込み可能性や漸近次元の有限性などの粗幾何学における重要な性質の応用先であるということから、幾何学者やトポロジストを中心とした様々な研究者に興味を持たれている。粗幾何学は幾何学的群論とも深く関わり、この観点からの研究も進めた。
実際、深谷友宏氏(東京都立大学)との共同研究において、粗凸距離空間というクラスを導入し、これについて粗Baum-Connes予想を証明し、論文を執筆し公表することができた。また、深谷友宏氏および山内貴光氏(愛媛大学)との共同研究において、双曲的空間に対するGromov積の一般化を導入し、すべての粗コンパクト化がその一般化Gromov積により得られることなどを示し論文を執筆し公表することができた。また、加藤本子氏(愛媛大学)との共同研究において、Artin-Tits群の非シリンダー的双曲性に関わる研究を行い、論文を執筆し公表することができた。また、今年度においては、加藤本子氏との共同研究をさらに推し進めるべく、Artin-Tits群に関する双曲性や非正曲率性をより理解を深めることを目的として、研究を推し進めた。以上の研究成果について講演を行い広報することができた。
また、深谷友宏氏らと共同で「第3回幾何学的群論若手勉強会」「ワークショップ:幾何学的群論の新展開 」「第5回幾何学的群論ワークショップ 」を開催し、先に述べた研究成果の広報を行うとともに、幾何学的群論や粗幾何学に関する幅広い知見を、参加した数学者と共有し、今後の数学の発展の準備の一翼を担うことができた。
|