研究課題/領域番号 |
16K17604
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
栗原 大武 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (60637099)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 対称R空間 / 大対蹠集合 / 距離正則グラフ / デザイン理論 |
研究実績の概要 |
本研究では、コンパクト対称空間(より具体的には対称R空間)上の「大対蹠集合」と呼ばれる有限個の点の配置について「デザイン」と呼ばれる良い組合せ構造が入ることを示し、大対蹠集合の幾何構造の“良さ”と組合せ構造の“良さ”の関係性を追求することを目的とする。今年度の目標は昨年度に示した「対称R空間のモース・ボット函数の臨界多様体の指数と対称R空間上の大対蹠集合から自然に定まる距離可移グラフの交叉数の関係」という事実を拡張することとした。 昨年からの研究で対称R空間のタイプがsimpley lacedのA,D,Eに関係するものであれば対応の解明は終了しているが、そうでないB,Cの場合は、大対蹠集合が本来の対称R空間より"狭い"対称R空間にいることがわかった。あとはB,C型の各対称R空間について"狭い"対称R空間の特定をすることが残った課題である。 さらに対称R空間とデザイン理論の関係性の研究を進めるために、対称R空間がユニタリ群U(n)のときU(n)の大対蹠集合がどのようなデザインになるかを調べた。その際の大対蹠集合はZ_2^nという加法群とみなすことができ、シュアー関数などの表現論の知識を使うことで大対蹠集合が何デザインになるかの必要十分条件を求めることができた。この内容については現在論文を準備中である。 また一方で、北九州工業高等専門学校の橋永貴弘氏と非コンパクト対称空間Sp(n,R)/U(n)の中の特別な部分多様体の分類問題に着手した。我々のセッテングでは、その特別な部分多様体と根付き木と呼ばれる有限グラフに1:1対応がつくことがわかり、分類問題に進展があった。この内容については現在論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、以下のような3つの成果があったので研究はおおむね順調に進展していると言える。 (1) 特にBC型の場合の対称R空間上の大対蹠集合の組合せ論的性質(距離可移グラフの構造)と対称R空間の幾何的性質(モース・ボット函数の臨界多様体の指数の構造)の関係の研究 (2) U(n)上の大対蹠集合とデザインとの関係の研究 (3) Sp(n,R)/U(n)の中の特別な部分多様体の根付き木を用いた分類の研究
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今後の研究の推進方策 |
(1) 今年度得られた「対称R空間のモース・ボット函数の臨界多様体の指数と距離可移グラフの交叉数の関係」はまだ完全に全容を把握できているわけではないので引き続きこの関係を調べていく。またこれにより対称R空間の関数空間の表現論と大対蹠集合上のグラフの函数空間の表現論の関係もより深く理解できることが期待できるため、その関係性も調べていく。 (2) U(n)上の大対蹠集合とデザインとの関係の研究については一通りの目処はついたが、この手法で他の対称R空間上の大対蹠集合とデザインの関係を調べられることが予想されるので、引き続き研究を続ける。 (3) Sp(n,R)/U(n)の中の特別な部分多様体の根付き木を用いた分類の研究についてもある程度の目処はついたが、残っている問題もあるので細かいところまで詰めていきたい。また他の非コンパクト対称空間の場合にも我々の手法を適応して、分類問題に取り組んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は出張費として見込んでいた予算のうち旅費支給の形で招聘されたものが多くあり、そのため支出が予定を下回る形となった。平成31年度には企画する研究集会に研究者を招聘する予定があるなど多くの予算が必要となる。
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