本研究では、コンパクト対称空間(より具体的には対称R空間)上の「大対蹠集合」と呼ばれる有限個の点の配置について「デザイン」と呼ばれる良い組合せ構造が入ることを示し、大対蹠集合の幾何構造の“良さ”と組合せ構造の“良さ”の関係性を追求することを目的とする。 今年度の目標は、各分解不可能な対称R空間の大対蹠集合に距離から定まる自然なグラフ構造を入れるとそのグラフが距離可移グラフになることの証明を対称R空間の分類定理を使わずにできるかどうかについて挑んだ。その証明は完全に完了していないが、副産物として対称R空間の距離の入れ方の重要性に気づけた。一見、対称R空間の定義には計量の入れ方の制約がなく、様々な計量を許すと思われていたが、分解不可能な対称R空間の場合は計量の入れ方はスカラー倍を除いて一意的であるという事実があり、この事実からグラフ構造の解明に迫れるのではと考えている。 研究期間全体を通じての成果は十分にあった。当初の目標である大対蹠集合とデザインの関係は、elementaryな既約表現が鍵になることが分かったし、個別の複素グラスマン空間やユニタリ群の場合は、大対蹠集合と相性のよいL^2(M)内の既約表現の例や分類をかなり詳細に得ることができた。そして先述の通り、大対蹠集合の距離構造に注目すると距離可移グラフが得られるという、組合せ論的に興味深い事実も得ることができた。また、当初計画していたよりも大対蹠集合と組合せ論の関係が明確になってきたので、この研究の続きを別の科研費で継続するつもりである。
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