研究課題/領域番号 |
16K17608
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
安藤 浩志 千葉大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (40767266)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Weyl-von Neumannの定理 / 自己共役作用素 / ユニタリ表現 |
研究実績の概要 |
申請者は松澤泰道氏と共に2015年にWeyl-von Neumann型定理(本質的スペクトルが等しい2つの自己共役作用素はコンパクト作用素の差を除いてユニタリ同値--これをWeyl-von Neumann同値ということにする-)は非有界自己共役作用素において成り立たず、その不成立の度合いを記述集合論の観点から解析した。この時点で実は非有界性にもかかわらずess spec=Rとなる自己共役作用素は全てWeyl-von Neumann同値である事を見つけた。本年度の研究では、閉集合Mで、ess spec=Mとなる任意の自己共役作用素がWeyl-von Neumann同値となるためのMが満たすべき必要十分条件を発見し、論文発表した(投稿中)。 また直交Hilbert-Schmidt群のBoson Fock空間上のユニタリ表現の族を解析し、多くの場合にそれらがIII型因子表現となる事を確認した。因子性やユニタリ同値性の為の完全条件は見つかっておらず、H29年度も研究を継続する。 最後に、本年度に以前から継続して研究していた有限型Polish群に関するPopaの埋め込み問題を否定的に解決する事に成功した。すなわちHilbert空間のユニタリ群の強作用素位相に関する閉部分群に同型な, 両側不変距離を持ったPolish群で、いかなるII_1型因子環のユニタリ群の強閉部分群にも同型でないものが無数に存在する事を、可算離散群の一様有界表現のユニタリ表現可能性の新たな特徴付を与えて証明した(論文投稿中)。より詳しく、πが可算離散群ΓのHilbert空間Hへの可逆表現であるとき、加法群HとΓのπによる半直積Polish群Gを考えると, Gが両側不変距離を持ち、かつU(H)に埋め込める事とπの一様有界性は同値であり、GがPopaの意味で有限型である事とユニタリ化可能である事が同値である事を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Weyl-von Neumannの定理周辺のBorel同値関係の解析は技術的困難があってあまり進展はなかったが、定理が成り立つ閉集合を完全に特徴づける事に成功した。このような特徴付が可能である事は当初予想されなかったことであり、他の研究に生かせる可能性もある。直交Hilbert-Schmidt群のユニタリ表現の族についても、問題の完全解決には至っていないが前年度には全く分からなかった性質も明らかになってきている。
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今後の研究の推進方策 |
Weylの対角化定理をBorelな形で実行する事が可能か検討する。これが達成されれば、Weyl-von Neumann同値関係が、数列版の類似同値関係にBorel簡約される可能性が高く、研究が一定の到達点に達したと言える。直交Hilbert-SChmidt群の表現に関してはまだ数理物理的手法を試し切れていないので、散乱理論、波動作用素の理論を参考にして解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初12月に予定していた松澤泰道氏との信州大学教育学部での研究打ち合わせを諸事情により中止したため。
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次年度使用額の使用計画 |
松澤泰道氏との信州大学教育学部での研究打ち合わせの際の旅費に使用する。 またスペクトル理論に関する文献を2冊購入する。
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