研究実績の概要 |
今年度はUffe Haagerup, Cyril Houdayer, Amine Marrakchi氏と共同でIII_1型因子環のbicentralizer環の構造研究を行った。具体的にはN,Mを可分な前共役空間を持つ因子環の包含(忠実正則条件付き期待値Eを持つとする)N⊂M, NをIII_1型とするとき、Eと可換な忠実正則状態φに関するbicentralizerB(M,φ)の上にbicentralizer flowという加法群Rの連続作用を構成した(このflowは最初にUffe Haagerup氏によって発見されたが, 後に別の方法でMarrakchi氏により再発見された)。このflowはφの漸近固有ベクトルとのintertwining関係式によって特徴づけられ、bicentralizer自身と共に、包含N⊂Mの重要な情報を提供する事がわかった。1例として、flowがエルゴード性を持つ事と, Mのirreducible hyperfinite subfactor Pで, Nに忠実正則条件付期待値の像であるものが存在する事とは同値である。また、強い意味でのKadisonの問題, すなわち包含N⊂Mが共通のMaximal abelian subalgebra A⊂Nで, 忠実正則条件付期待値の像となるものが存在する事と、relative bicentralizerが自明(=C1)となる事は同値である。また、III_1因子環と他の因子環のテンソル積のbicentralizerがいつ自明となるかについても考察した。具体的にはMをσ有限III_1型因子環、Nをσ有限因子環とし、MとNのテンソルがtrivial bicentralizerならば、MにAFD III_1因子環Rをテンソルしたものはtrivial bicentralizerを持つ事がわかった。論文は現在投稿中である。
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