本研究課題の本題である、非有界な係数をもつ2階楕円型作用素が生成する強連続半群については、考える楕円型作用素が単調かつ本質的に極大増大作用素でない場合に作用素のある拡張が極大増大になるような条件を発見し、現在論文原稿を作成している。これは、ヒルベルト空間上のフリードリクス拡張に対応する概念の拡張になっており、今後この手の研究を行う際に有用なものになると期待している。一方で、当初計画していた非縮小な半群の統一的な生成までは残念ながら至らなかった。 同作用素を含む関数不等式であるRellichの不等式については、Giorgio Metafune氏、Chiara Spina氏、Luigi Negro氏との共同研究で、有界な領域上でのRellichの不等式の成立に関するパラメータの必要十分条件を導出している。Metafune-Sobajima-Spinaで以前に行った研究はN次元ユークリッド空間上で同不等式を扱ったが、境界をもつ領域上での解析ではスケーリング・球対称性などの性質を用いることができないためより困難がある。これを、今まで取り組んできた非有界な係数をもつ楕円型作用素のレゾルベントの構造を用いる手法と、レゾルベントを用いて作用素を「張り合わせる」方法を組み合わせることで解決した。 また、非線形偏微分方程式の観点からの研究では、この研究中に提起した、非線形方程式の臨界ケースに適合するテスト関数法をさらに吟味し、これを時間に依存する摩擦項を持つ半線形消散型波動方程式に適用することにより、解の存在時間を精密に評価できるような方程式の範囲を拡張した。
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