研究課題/領域番号 |
16K17620
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
久保田 直樹 日本大学, 理工学部, 助教 (20754972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 不規則媒質中の乱歩 / 大偏差原理 / ファーストパッセージパーコレーション / ランダムポテンシャル中の乱歩 / フロッグモデル |
研究実績の概要 |
今年度は主に,前年度に得ることができた成果「不規則媒質中の乱歩におけるレート関数の連続性」をフロッグモデルに応用できるか試みた.そのためにまず,フロッグモデルに関する先行研究の精査を行った.その後,前年までの研究と照らし合わせ,応用する際に生じた不具合の改良や新たな手法の開発を行った.その結果,フロッグモデルにおける情報拡散度合において,ある種の連続性を見出すことに成功した.本研究課題の大まかな目標は既に達成されているが,今年度の研究によって本研究の応用可能性を模索できたことは非常に大きな収穫であった.これに付随する主な活動実績は以下の通りである: 1.フロッグモデルにおける最短到達時間の偏差に関する論文が,Advances in Applied Probabilityに掲載された. 2.本研究課題である「不規則媒質中の乱歩におけるレート関数の連続性」に関する論文がJournal of Theoretical Probabilityにアクセプトされ,現在論文誌に掲載待ちである. 3.不規則媒質中の乱歩の漸近挙動に関する研究の一環として,「象ウォーク」の中心極限定理に関する研究を行った.その成果はJournal of Statistical Physicsに掲載された. 上記の研究に関する研究発表として,ライデン大学(オランダ)で開催された国際研究集会「Japan Netherlands workshop "Probabilistic methods in statistical mechanics of random media"」,京都大学で開催された国際研究集会「Rigorous Statistical Mechanics and Related Topics」にて招待講演を行った.また,日本数学会や大阪大学確率論セミナーなどでも研究発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は,本研究課題である「不規則媒質中の乱歩におけるレート関数の連続性」に関する成果の応用と研究発表であった.本研究の応用という点においては,「フロッグモデルにおける情報拡散度合のある種の連続性」という成果が得られた(これについては,現在論文作成中である).一方,コロナウィルスの影響で多くの研究集会が中止・延期となったため,研究成果の発表という点については十分に達成できなかった.これを踏まえ,主な成果と課題は以下の通りである: 1.本研究課題である「不規則媒質中の乱歩におけるレート関数の連続性」に関する論文がJournal of Theoretical Probabilityにアクセプトされ,現在掲載待ちである.この成果については複数の研究集会で発表済みであるが,より広い周知を目指し,今後開催される研究集会やセミナーでも講演を行う. 2.本研究遂行の過程において,関連する数理モデルでも新たな結果を得ることに成功した.その成果をまとめた論文が,Advances in Applied ProbabilityやJournal of Statistical Physicsに掲載された.これに関しては研究が完成し間もないため,その成果をまだ十分に周知できていない.残りの研究期間を利用し,得られた成果を国内外の研究集会で積極的に発表していくことが課題である. 3.「フロッグモデルにおける情報拡散度合のある種の連続性」に関しては,手法の正当性と成果のインパクトを判断するために,その成果をいくつかの研究集会で発表した.それを踏まえ現在論文を作成中である.次年度の課題は,この論文の完成とその成果をより広く周知することである. 上記のように,研究結果という点では本研究課題は達成されているが,研究集会の中止によりその結果を十分周知できていないため,進捗状況はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は,「不規則媒質中の乱歩におけるレート関数の連続性」と「フロッグモデルにおける情報拡散度合のある種の連続性」の2つの結果を広く周知していくことである.そこで,今後の研究の推進方策として以下の3点を考えている: 1)今後開催予定である国内研究集会(日本数学会,確率論シンポジウム, “無限粒子系、確率場の諸問題”,新潟確率論ワークショップ等)において,本研究課題で得られた成果を研究発表していく.特に,上記2つの研究成果を中心に発表を行い,本研究課題のポイントとなる手法の紹介と正当性の確認を行う.また同時に,その他の数理モデルへの応用可能性も行う. 2)社会情勢を慎重に判断し,可能であれば国外研究集会においても本研究課題に関する研究発表を行う.特に,ファーストパッセージパーコレーションは本研究に深く関連しているため,その専門家であるMichael Damron氏(Georgia Tech)が参加する研究集会で研究発表を行う. 3)研究発表の反応を受け,本研究課題において新たな方向性や議論の余地が生じた場合,関連分野の研究者のもとを適宜訪問し研究打ち合わせを行う.特に,本研究は不規則媒質中の乱歩とファーストパッセージパーコレーションの両方に関連していることから,それらに知見の深いJean-Christophe Mourrat氏(NYU)を想定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により,出席・講演を予定していた研究集会が中止・延期になった.その結果,それらに関する出張が取りやめとなり,急遽次年度使用額が発生した.この次年度使用額は,中止になった研究集会の代替(他の関連研究集会または研究打ち合わせ)や延期になった研究集会に関する出張に使用予定である.これにより,これまでの研究で得られた成果を広く社会に周知し,本研究課題の完成度をより高めることを目指す.
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